それでも「振り込め詐欺」に遭う人がいる理由 なぜ他人の声を息子と勘違いしてしまうのか
人はどこかで、「自分だけは大丈夫」と思っているところがあります。偽電話詐欺にかかる人は皆、「ニュースでこうした詐欺があることは知っていて、十分気をつけていたつもりだった。まさか自分が被害に遭うとは……」と、口をそろえます。
被害者は皆「私は大丈夫」と思っていた人たち
このように、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価してしまう人の特性を、心理学の用語で「正常性バイアス」といいます。バイアスとは偏りという意味で、正常なほう(=自分がそうであってほしいと思うほう)へ偏った考え方をもってしまうために、ついつい大丈夫だろうと思ってしまうのです。
つまり、息子や孫に成り済ましたニセ電話にだまされてしまう人は皆、あなたと同じように「私は大丈夫」と思っていた人たちなのです。
正常性バイアスと似た心の働きに「確証バイアス」というのもあります。これは、ひとたび思い込むと、それが正しいものだと示す情報を、無意識に集めてしまうことをいいます。たとえば、60代の主婦が、一緒に住んでいた娘を語る人物の詐欺被害に遭ったという事件がありました。耳から入ってくる情報は限られていますから、彼女は瞬時に「娘かな」と思ってしまい、「何かへんだな」と思いながらも、結局は「きっと娘に違いない」とおカネを振り込んでしまいました。
この場合、「電話の相手は娘であるはずだ」「私に悪いことが起こるはずがない」と考え、声が娘と多少違うように感じたとしても、「風邪を引いているのかもしれない」と、都合のよい解釈をしてしまうのです。
人は「社会は安全で、多くの人はいい人である」と信じたがる生きものです。あなたもそうではないでしょうか。犯人グループは、そこをついてきます。
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