それでも「振り込め詐欺」に遭う人がいる理由 なぜ他人の声を息子と勘違いしてしまうのか

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人の判断力は、心の状態に大きく影響されます。人は誰でもリラックスしているときには正しい判断をすることができますが、緊張していたり、プレッシャーがかかるような場面では、いつものように合理的な判断ができなくなるものです。実際に詐欺被害に遭った人も「あのときもっと落ち着いていればだまされなかったのに」と悔やむ人が多いのです。これは、だます側が、正常な判断ができないようにあなたの心の状態をコントロールしているからなのです。

詐欺被害に遭う多くの人の心の状態は、パニックになっています。パニックとは、恐怖や不安などで過度なストレスがかかって合理的な判断ができない状態のことをいいます。ニセ電話詐欺では、不安、恐怖を植え付けて、パニック状態に追い詰めていきます。人がなぜ不安や恐怖を覚えるかというと、どれくらい好ましくない結果が起きるかわからないからです。

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さらに、時間的切迫によっても人はパニックになります。ニセ電話詐欺では「今日中に処理しないともっとおカネがかかる」とか、「今すぐ登録しないと、還付金が受けられない」といって時間的に切迫した状態に追い込んでいきます。急がされて焦っているときは、問題に役立つ情報を選んで、きちんと判断するのではなく、パッと思い浮かびやすい「新しい記憶」を取り出して使おうとするところが人間にはあります。心理学ではこれを「ヒューリスティック」といいます。

テレビなどのニュースでニセ電話詐欺事件が報じられているのを見ているときは、冷静な状態です。ですから、「あれほど報道されているのに、いまだにだまされる人がいるんだ」と不思議に思うことでしょう。

だまされてしまう大きな理由は、不安や恐怖をあおられ、さらに時間的切迫も加わり、心理的に追い込まれているからです。このことを理解して、あなたもだまされる可能性があることを肝に銘じてください。

和子さん65歳が「200万円」を渡してしまうまで

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西田 公昭 立正大学心理学部教授/博士(社会学)

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西田 公昭 / Kimiaki Nishida

1960年徳島県生まれ。1984年関西大学社会学部卒業、1991年静岡県立大学助手、1994年スタンフォード大学客員研究員、2003年静岡県立大学准教授を経て現職。カルト宗教のマインド・コントロール研究や、詐欺・悪徳商法の心理学研究の第一人者として、新聞やテレビなどのマスメディアでも活躍。オウム真理教事件や統一協会などの多数の裁判で、鑑定人および法廷証人として召喚される。主な著書に『マインド・コントロールとは何か』(紀伊国屋書店)『「信じるこころ」の科学』(サイエンス社)『だましの手口』(PHP研究所)などがある。

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