武蔵小杉のマンション価格が急上昇した理由

08年から4割増、住民の本音に透ける成熟期

武蔵小杉は1990年代後半から周辺工場の閉鎖が相次いだことを受け、川崎市が跡地を利用した街づくりを開始。ただ、現在のような勢いを決定づけるようになったのは、2008年に地上49階建てのタワーマンション「ザ・コスギタワー」が竣工したのがきっかけでしょう。中山美穂さんをイメージキャラクターに起用した、「トウキョウスキ ヨコハマスキ ヨクバリスギ シアワセスギ ムサシコスギ」の広告キャッチコピーが反響を呼び、その後も次々とタワーマンションや商業施設が建てられていきました。

ザ・コスギタワーの分譲単価は、新築時で1坪(3.3平方メートル)当たり180万~220万円でしたが、現在は中古物件の売り出し価格が同280万~320万円まで上がっています。30階付近の75平方メートル程度の専有部分で比較すれば、10年前で4500万円程度だった物件が7000万円前後に跳ね上がっている計算となります。

当初は駅東口エリアから始まった開発は駅西側、北口にまで拡大。2017年12月竣工予定の53階建てツインタワー「パークシティ武蔵小杉 ザ ガーデン」の建設が進められているほか、日本医科大学武蔵小杉病院のキャンパス再編に伴うマンション建設計画もあります。「住んでみたい街アンケート2015」でも「2020年までに発展していそうな街」として豊洲、品川、勝どきに次いで4位となっています。

街全体の勢いも増している

街全体を見ても勢いは増しています。今年6月に川崎市中原区の人口は25万人を突破。政令指定都市である川崎市内に行政区は7つありますが、中原区は2005年以降1位を維持しており、2015年の国勢調査においては2010年時からの人口増加率が5.8%と、神奈川県内の市町村別でみても最も人口が増えています。これは武蔵小杉エリアに人口が流入しているのが主因とみて間違いないでしょう。

東急東横線で渋谷と横浜のほぼ中間に位置する武蔵小杉駅には、JR東日本と東京急行電鉄(東急)の2社5路線が乗り入れています。東京、新宿、渋谷、横浜といった首都圏の特に大きな街にもそれぞれ20分前後以内で接続できます。オフィス街や繁華街の喧噪からわずかな時間で閑静な住宅街にたどり着くという、都会で働くビジネスパーソンにとってみれば絶好の立地でもあります。

勝どきや港南、芝浦、豊洲といったタワーマンション街と比べて唯一、地価が上がっているのは、これらの4地域が臨海部なのに対し、武蔵小杉が「内陸部」だという点。よみがえるのは東日本大震災の記憶です。浦安などの埋め立て地においては液状化による地盤のひずみが見られました。臨海部のタワーマンションには、「大地震に地盤が耐えられるのか」「津波は大丈夫か」などの不安がよぎりますが、内陸部の武蔵小杉はそうした心配が相対的に小さいのです。

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