ベッキーの釈明はいったい何がマズかったか 最大の失敗は「不倫疑惑」そのものではない
「迅速かつ適切な情報開示」が絶対条件
ここで「クライシス・コミュニケーション」の定義と基本姿勢を挙げてみましょう。クライシス・コミュニケーションとは、「企業や個人が危機的状況に直面したとき、被害を最小化するために行う対人活動」のこと。利害関係者(ステークホルダー)やメディアに向けて、迅速かつ適切な情報開示することが求められます。
なかでも中心になるのは会見であり、「経緯、事実関係、今後の対応などを誠実に話す」のが基本姿勢。つまり、包み隠さず「危機や失敗を潔く認めて、信頼性の大幅ダウンだけは避ける」という会見が、のちのV字回復に向けた再スタートにつながるのです。
この点でベッキーさんは大きく間違えてしまいました。潔く認めたのは、「連絡を取る」「2人で食事」「実家に行った」の3点だけであり、多くの人が知りたいクリスマスやホテルのことなどには一切触れませんでした。「情報開示が必要なことを言わない(言えない)」のなら、それは釈明や謝罪の会見としては不十分であり、さらなるイメージダウンを生むだけです。
もし不倫をしていたのなら、潔く認めた上で「気づけませんでした」「未熟でした」などと猛省する。もし不倫をしていないのなら、証拠になるようなことまですべてを話した上で「これだけは分かってください」と懇願して理解を求める。今回のケースで釈明や謝罪の会見をするとしたら、このどちらかしか選択肢はなく、都合のいいところを抜粋して「友人です」は、最も避けなければいけない方法だったのです。
誰に対して謝っていたのか?
これまでベッキーさんのファンだった人は、報道を聞いて「信じられない」と思ったでしょうし、会見を見て「本当にベッキーはこう思っているのかな?」と感じたのではないでしょうか。かくいう筆者も、「ベッキーさんは言いたいことの半分も言わせてもらえなかったな」と感じました。
ベッキーさんのような人気タレントは、影響力が大きく、所属事務所の業績を左右しやすいことから、「自分の意志で好きなように話せない」立場。今回のような釈明や謝罪の会見でも、所属事務所の上層部、スポンサーや広告代理店の関係者、レギュラー番組のスタッフの意向を踏まえてコメントの方向性を決める、という傾向があります。
ベッキーさんのコメントにおける方向性で象徴的だったのは、“最大の被害者”と思われる川谷さんの妻に向けた謝罪がほとんどなかったこと。これは「友人でやましいことはないから、奥さんに謝る必要はない」というスタンスで会見に臨んだ証拠であり、「7回も『申し訳ございません』と繰り返し、12回も頭を下げた相手は、スポンサーや広告代理店の関係者、レギュラー番組のスタッフだった」ということになります。
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