ポイント還元と現金値引き、どっちがお得? 行動経済学が教える正しいポイントの貯め方

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目的がポイントを貯めることになってしまい、そのための手段として結果的に買い物金額が増えるという、本末転倒なことになっているのです。

ポイントのために「無駄」な買い物をしない

飛行機の搭乗マイルも似たような構造があります。つまりこれは消費者の「保有効果」や「選好の逆転」といった心理的なバイアスを利用することによって、売り手にとっては効果的なマーケティングになっていると言っていいでしょう。

したがって、最も正しいポイントの使い方は、貯めておくことはせずに、すぐに使うことです。とは言っても「貯めたくなる気持ち」というのは、なかなか自分でコントロールすることはできません。それに金利がつかないから損だとは言っても、昨今のような超低金利であれば、その差はたいしたことにはならないでしょう。

ですから、ポイントを貯めて楽しむということ自体が決して悪いというわけではありません。注意すべきことは、先ほどの「選好の逆転」です。ポイントを付けてもらいたいがために無駄な買い物をするということは、避けるべきです。でないと、まんまと売り手の術中にはまってしまうことになりかねません。

「同じ買い物をするなら、ポイントのつくお店にしよう」と、わざわざ遠いお店に出かけたり、「今日はポイント2倍デーだから何か買い物しなきゃ」といった行動を取ったりする人が多いようですが、これこそが、まさに売り手が狙っていることです。

ポイントはあくまでも割引のひとつであり、「おまけ」なのですから、それ自体にあまりこだわらず、プラスアルファ程度の楽しみにとどめておくことがよいのではないかと思います。

大江 英樹 経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

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おおえ ひでき / Hideki Oe

大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。日本での導入第1号であるすかいらーくや、トヨタ自動車などの導入にあたりコンサルティングを担当。2003年から大手証券グループの確定拠出年金部長などを務める。独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるよう支援する」という信念のもと、経済やおカネの知識を伝える活動を行う。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『自分で年金をつくる最高の方法』(日本地域社会研究所)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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