少子化の進行と大学等の新増設による入学定員増を受けて、実質的な「大学全入時代」といわれる。確かに、大学・短大の全志願者に対する入学者の割合(収容率)は上昇傾向にあり、2008年には92%に達している。
しかし、ここでの「志願者」は、進学を希望している者ではなく、実際に受験したものを指す。したがって、進学を希望しながらもさまざまな事情で断念し、受験しなかった若者は「志願者」に含まれていない。
もちろん進学には相応の学力が必要だが、個々の家計に大きなウエートがかかるわが国での教育費負担の現状に照らすと、進学の可否が家庭の経済力に少なからず左右されることは無視できない。
病気や災害、自殺で親を亡くした子どもたちを支援するNPO「あしなが育英会」が、昨年12月に高校奨学生(1・2年生)の遺児母子家庭を対象に実施した調査によると、直近3カ月間に「リストラされた・離職した」母親が3.9%、「失業中」9.3%で、就業中の母親も58.9%が非正規雇用だ。こうした家庭の経済事情の悪化で、「進学意欲をなくした」「進学をあきらめた」高校生の割合が上昇、それぞれ16.1%、9.0%を占めている。
誰もが大学「志願者」になれるわけではない。雇用・所得情勢が悪化する中、教育費を捻出できない世帯を中心に、進学を断念する若者の増加が危惧される。
(東洋経済統計月報編集部)
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