北海道新幹線を含む整備新幹線は、50年近い歴史的経緯を持ち、全国にまたがるプロジェクトだ。しかし、大学や研究機関の研究対象としては必ずしも積極的に取り上げられておらず、研究者の数も意外なほど少ない。
理由は定かではないが、整備新幹線は「頭としっぽ」のありかを探るだけでも手強い存在であることが一因かもしれない。
構想は国土計画を源流としつつ、「政治新幹線」の呼び名が示すように国政・県政レベルでの政治的事象や駆け引きが絡み、さらには自治体の地域政策や地域経済の浮沈、観光産業の振興、まちづくりとの連動など、実に多様な組織や現場が関わる。関連領域の全容を見渡すこと自体が容易ではない。
整備新幹線はどこで、どんな形で地元の暮らしの向上に貢献できるのか。過去の開業事例では、自治体が中心となって検討組織をつくり、経済界などと連携して対応を練るのが通例だった。しかし、「100年に1度」級の、しかも予測困難な変化の波に直面した結果、対策の多くが開業記念イベントや観光プロモーションに収斂してしまった事例は珍しくない。
新幹線ほくとう連携研究会のように、地元に根ざした専門家の集団が、学術的なアプローチをベースとしつつ、多面的に整備新幹線開業の課題や可能性を検討する組織は、筆者が知る限りでは存在しなかった。北海道新幹線活用の難易度の高さに対する地元の危機感を、ほくとう総研がすくい取った形だ。研究会の真価はあくまで、研究報告書が今後いかに活用され、実際の成果に結びつくかによって問われる。
青森と函館、進み始めた連携
とはいえ、研究会の発足や、これまで度外視されてきた「旅客輸送以外への新幹線活用」にまで切り込む問題提起は、実現可能性はさておき、それ自体が「新幹線効果」の一端と位置付けられよう。何より、気候的にも社会的にも厳しい環境にある道南・青森県の青函圏で、持続可能な地域づくりのヒントが得られれば、全国の他地域にも応用が期待できる。
身近なところでも、変化の兆しが目につくようになった。例えば、東北新幹線・新青森駅の売店には昨年夏、「青函ソフトキャラメル」が登場した。青森の象徴・リンゴのパウダーと、人気の高い「函館牛乳」を利用し、函館市と青森市の業者が共同開発したという。
函館、青森両商工会議所による「会員事業所パートナシップ構築懇談会」の成果物の一つだ。函館商工会議所によると、これまでの連携実績は菓子などの食品を中心に15件に上る。
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