3月26日に開業する北海道新幹線の木古内駅は、青函トンネルを通り抜けた列車が北海道内で最初に停まる駅だ。人口4500人余り、必ずしも観光資源に恵まれない木古内町は、道南の西部9町のハブとして「情報」「ネットワーク」を武器に新幹線活用に挑む。
函館市などとひと味違った戦略を進める背景には、1988年の青函トンネル開通を生かせなかった教訓があるという。北海道の玄関口としてどう存在感を発揮していくか。厳寒の中、本州との多層的なつながりを生かして開業準備を進める地元の表情を追った。
地域おこしの「核」に2人の若者
年明けから間もない1月8日、木古内駅前に建つ道の駅「みそぎの郷(さと) きこない」館内では、スタッフらが5日後のオープンに向けて準備に追われていた。
館名は、1831(天保2)年から町内の佐女川(さめがわ)神社に伝わる「寒中みそぎ祭」にちなむ。行修者(ぎょうしゅうしゃ)と呼ばれる4人の青年が豊漁豊作を願い、神社にこもって水ごりを繰り返した後、津軽海峡の海水で神社のご神体を洗い清める神事だ。毎年、1月13日から3日間行われ、道の駅のオープンも祭の初日に合わせて設定した。
慌ただしく動き回る人々の中に、2人の若者がいた。千葉県八千代市出身の浅見尚資さんと、木古内町出身の津山睦さん。それぞれ東京で働いていたが、ともに2012年7月から町の地域おこし協力隊員となった。彼らの活動の様子はそのまま、町の開業準備の特色を浮き彫りにする。
2人の目標は、新幹線開業後に「観光コンシェルジュ」として来訪者をもてなし、案内することだ。木古内町に加え、「新幹線木古内駅活用推進協議会」を構成する知内、福島、松前、上ノ国、江差、乙部、厚沢部、奥尻の計9町が守備範囲となる。そのミッションを果たすため、3年半の時間を費やして、情報の収集・発信、そして人的ネットワークづくりを進めてきた。
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