「それでも、協力してくれる地元の漁業者の意識が変わってきた。うちのような小さな町は、駅ができるだけでも大きな効果。子どもたちが帰る時には『今度は自分で遊びに来てね』と送り出している。リピーターを確保して、地域にきちんとお金が回る仕組みをつくりあげたい」と藤谷事務局長。開業対策の一環として昨年、道外で商談会に参加したところ、早速、仙台市の旅行代理店から照会があったという。
新幹線開業後には、木古内で海を知った子どもたちが、「はやぶさ」で道南に降り立ち、津軽海峡を眺めながら同窓会を開く日が来るかもしれない。
函館へは木古内から在来線で
さらに木古内町は、北海道新幹線の立地環境や料金設定も武器に、新函館北斗に代わる道南の玄関口としての機能をアピールし始めている。
2015年にJRグループが公表したダイヤや特急料金・割引切符の設定は波紋を広げた。道南と東京を結ぶ列車は1日10往復どまり。仙台・盛岡・新青森と往来する列車も各1往復にとどまる。しかも、青函トンネルの維持費などによって運行コストがかさむことから、北海道新幹線部分の特急料金は東北新幹線のほぼ1.5倍の水準に設定された。
さらに、割引切符も値引率や購入方法が限定的で、フリーエリア付きの切符は廃止される。函館-首都圏の移動を考えた場合、悪天候時の運行の安定性を除けば、航空機優位の現状は揺るぎそうもない。
特に青函圏の青森-函館間については、乗り継ぎが2回発生するうえ、所要時間はほとんど短縮されず、料金ばかりが高くなる状況にある。その結果、「青森から函館へ向かうなら、いっそフェリーに」「木古内で新幹線と在来線を乗り換えては」といった声が地元で上がり始めた。
木古内駅には13往復中8往復の列車が停まることから、高価な特急料金を逆手に取る形で、地元は「木古内なら1時間早く北海道観光を始められる」とアピールしている。北海道新幹線はルートの大半がトンネルか内陸部を通り、車窓からは海がほとんど見えない。
だが、江差線は海沿いを走り、津軽海峡や函館山も眺められる。JR北海道から江差線の経営を引き継ぐ第三セクター「道南いさりび鉄道」の利用を促すためにも、木古内で同鉄道に乗り換え、車窓を楽しみながら函館へ移動しては……というのだ。
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