新幹線駅に生かす青函トンネルの「苦い教訓」 道南の「ハブ」を目指す北海道・木古内町

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在来線の木古内駅。町中心部側に建つ

このほか、木古内駅はまちづくりの面で立地環境に恵まれている。新幹線駅と在来線駅、さらには道の駅がまちの中心部に集まっている例は全国でもまれだ。

「医療機関や公共交通機関が町中心部にコンパクトにまとまっている。まちづくりのうえでは理想的と言っていい。しかも、函館から江差や松前に車で向かう時、最初の休憩地点候補になるのは木古内の道の駅。木古内駅の乗降客だけではなく、函館方面からの旅行者にも立ち寄ってもらえる」と木古内町まちづくり新幹線課の丹野正樹・新幹線振興室長。

視野は空路にも広がる。2015年は大阪や名古屋でもプロモーション活動を展開した。新幹線開業の話題性に乗って、圧倒的なシェアを誇る「新千歳発着」の道内旅行をいくらかでも道南発着にたぐり寄せようと策を練る。

「肝心なのは開業後」

もちろん地元は、新幹線開業を契機とした観光振興だけで将来を切り開けるとは考えていない。経済活動や地域づくりの担い手そのものをどう増やしていくか。まだまだプレーヤーは限られているといい、観光拠点としてだけではなく、交流・人材育成の場としても道の駅に期待が集まる。

今年の「寒中みそぎ祭」=木古内町観光協会提供(1月15日)

「黙っていても新幹線は開業する。肝心なのは、開業後に何をするか。駅前には『子育て支援住宅』をうたって、集会所などを併設する約40戸分の道営住宅も建つ。人を呼び込みながら、日本版DMO(Destination Marketing/Management Organization、地域観光を一体的にマネジメントする組織)のような組織をつくっていければ」。丹野室長は開業後を見据える。

みそぎ祭の終了後、木古内町観光協会に電話すると「祭は例年よりも人が増え、道の駅も大勢の人でにぎわっている」と藤谷事務局長の弾んだ声が返ってきた。明治期の士族入植が縁で姉妹都市となった山形県鶴岡市からは、加茂水族館の名物・クラゲが道の駅に贈られたといい、開業キャンペーンや物産PRの連携も始まっている。

道南の小さな駅が地域をどう変えていくのか。木古内の動きから目が離せない。

櫛引 素夫 青森大学教授、地域ジャーナリスト、専門地域調査士

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くしびき もとお / Motoo Kushibiki

1962年青森市生まれ。東奥日報記者を経て2013年より現職。東北大学大学院理学研究科、弘前大学大学院地域社会研究科修了。整備新幹線をテーマに研究活動を行う。

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