北海道新幹線開業が3月26日に迫った。木古内、新函館北斗駅が建つ道南は、カウントダウンが大詰めを迎え、開業ムードが高まっている。一方、津軽海峡を挟んだ青森県側にも、本州最北の新幹線駅「奥津軽いまべつ駅」が誕生する。
駅が立地する今別町は人口約2,800人、地元は「日本一小さい新幹線のまち」をうたう。開業時は「はやぶさ」「はやて」13往復のうち7往復が停車し、一部の鉄道ファンやメディアからは「1日何人が乗降するのか」という好奇の視点でみられがちだ。しかし、この町の夏祭りに全国各地から200人もの若者が参加し、地元の人々と交流を深めていることは、あまり知られていない。
人口減少と高齢化が加速する社会で、高速鉄道と地域の暮らしがどのような接点を生み出せるか。今別町の素顔にヒントが潜んでいるように見える。
60年で人口は3分の1に
今別町は津軽海峡に面し、美しい海岸線と津軽山地の山々に挟まれて、水田や集落が散在する。町の北端、浜名地区には青函トンネルの入り口があり、列車をウオッチできる小公園も整備されている。
半島の突端という地理的条件や雇用の受け皿となる産業の乏しさから、1955年国勢調査で8,000人を超えていた人口は、特に1980年代以降、激減した。1955年-2015年の減少率は66%、つまり60年間で3分の1まで減ったことになる。高齢化率も、最新の2015年2月現在のデータで48.4%と、10年連続で県内最高水準だ。全国ワースト級の人口減少と高齢化に直面している青森県の中でも、今別町はその先端を行く。
視点を変えれば、日本国内の多くの地域が将来、たどり得る姿を先取りしている町でもある。
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