北海道新幹線の開業まで3カ月を切った。限定的な時間短縮効果、運行本数の少なさ、終点・新函館北斗駅の郊外立地など、かつてない逆風下で3月26日、出発のチャイムが鳴る。
ただ、本連載でも取り上げてきたように、他の地域の事例をみる限り、時間や本数といった「カタログデータ」だけで開業の成否が決まるわけではない。津軽海峡を挟んだ地域をウオッチしていくと、すでに「新幹線効果」と位置付けられる活動は少なくない。「マンパワー」をキーワードに、数字やニュースに表れにくい、しかし地域の将来像の設計につながりそうな動きを追ってみた。
患者搬送や魚介類輸送…活用探る
「函館で水揚げされた魚介類を北海道新幹線で運べないか」「高齢化が進んで生活習慣病などの治療が長期化する一方、医療資源の集約によって長距離通院する人が増えている。新幹線内のスペースを患者搬送などに有効活用するべきだ」――。
2015年11月6日、JR函館駅前のホテルで新幹線フォーラムが開かれた。報告者からは、過去の整備新幹線開業では話題に上らなかった斬新な提案が相次ぎ、約100人の聴衆が聞き入った。
主催したのは「新幹線ほくとう連携研究会」(座長=石井吉春・北海道大学公共政策大学院院長・教授)だ。日本政策投資銀行系のシンクタンク、北海道東北地域経済総合研究所(通称・ほくとう総研、東京都)が、東北・北海道の4シンクタンクと連携して2014年に組織した。
地域政策や産業、観光など多彩な分野の研究者・専門家を集め、1年がかりで研究活動を進めてきた。フォーラムは、その集大成として、北海道新幹線新函館開業対策推進機構(事務局・函館商工会議所)の「地域活性化フォーラム」と併催する形で開いた。
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