奥津軽いまべつ駅は、町中心部から約5km南の津軽線・津軽二股駅に併設されている。在来線との接続駅としての機能に加えて、北海道新幹線がくぐる青函トンネルの保守拠点、そして緊急時の避難駅としての性格を併せ持つ。駅の立地は、地元の地域づくりや観光客の利便性を必ずしも考慮できない環境下で現在地に決まった。
津軽線は、青森駅と津軽半島の北端・三厩駅(外ケ浜町)を結ぶ単線・非電化の路線だった。1988年の青函トンネル開業とともに、津軽線と道南の江差線を結ぶ形で、電化・新幹線規格の「海峡線」が開通。これら3線と函館本線の五稜郭-函館間が一体化して本州と北海道を直結し、JRは「津軽海峡線」の愛称をつけた。
この時、津軽線の南側は津軽海峡線の一部として電化されたが、北側は非電化のまま残った。この区間の線路は津軽海峡線と併走し、新幹線駅の建設地と想定された津軽二股駅でのみ交わった。青函トンネルの開業に合わせ、同駅に隣接して、津軽海峡線の「津軽今別駅」が開業した。
小さな町に集まる4つの「駅」
その後、2010年12月の東北新幹線全線開通・新青森開業を挟んで、北海道新幹線の工事が本格化した。2013年6月には奥津軽いまべつ駅が着工。当時はまだ駅名が正式決定しておらず、「奥津軽駅」という仮称で呼ばれていた。
「奥津軽」は1980年代末に登場した地域名で、主に五所川原市を中心とする、津軽半島の日本海側を指す。城下町・弘前市など「リンゴと岩木山」に代表される津軽地方のイメージとは一線を画した、新たな地域ブランドの形成を目指して提唱された。新駅は、地図の上では奥津軽地域の最寄り駅となる。だが、地元・今別町の強い要望もあり、最終的には現在の駅名に落ち着いた。
地図の上には現在、津軽二股駅と津軽今別駅、そして奥津軽いまべつ駅の3駅が並んでいる。さらに、駅前には木古内町と同じく、「道の駅」が建つ。
1997年4月にオープンした「道の駅いまべつ・半島ぷらざアスクル」。北海道新幹線開業に備えて2015年4月、リニューアルした。数え方によっては、鉄路・道路を合わせて4つの駅が、津軽半島北部に集まっていることになる。
だが、北海道新幹線の開業を前に、津軽今別駅は2015年8月に営業を終え、今は名前だけが残っている。一方の奥津軽いまべつ駅は、建物がほぼ完成したものの、駅として機能するのは北海道新幹線開業日からだ。それまでの間は、津軽二股駅に津軽線のディーゼル車が1日5往復停車する。
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