学校は、なぜ「治外法権」になってしまうのか 巨大組体操、PTAの背景に潜む問題
内田:組体操もそう。大人が2メートル以上の高さのところで作業するときは、労働安全衛生法に従わなくちゃいけないのに、それが子どもだと関係なくなるっていうね。
木村:本当に、みんなによく考えてほしいんです。法律には「よくある失敗をまとめて、それを情報共有するための手段」という面がある。だから憲法は国家の失敗集だし、民法は私人の間のトラブル集、刑法はよくある犯罪集――ということ。つまり「人間であればやってしまう失敗」というものが、そこに書いてあるわけです。
だから、「それが違法なんだ」という場合、その失敗集のチェックリストに触れているわけですから、「そうとう注意しなくちゃいけないぞ」という感覚を持ってほしい。「何か大きな問題があるはずだ」という感覚を、学校の空間にいる人みんなに持ってほしいんですね。
治外法権には、法律よりも恐ろしい制裁がある
木村:部活動の強制ということでは、今、どんな問題が生じているんですか?
内田:たとえば、部活動は今、成績評価につながってしまっているんです。聞いた話では、大学入試の面接で「あなたのいいところは?」って質問されると、多くの生徒が「部活動」のことを言う。「勉強で1番をとった」とか言う子はいない。1980年代に学力の多様化ということが言われて、部活動というものが子ども全体を見るときの大きな軸になってしまったんです。
そのため、たとえ周囲が「部活動はやらなくていいよ」と言っても「でも進学に関係があるし」ということで、やらざるをえない作用が働いてしまう。
木村:これも「治外法権」ですね。治外法権というのは、その団体内部で独自の制裁手段があるときに生じる現象です。つまり、法律に違反したら制裁があるんだけど、法律による制裁よりも、もっと怖い制裁がある空間は治外法権になる。だから自浄作用が働きにくいんですけれど。
学校のPTAや部活動もそうで、PTAに入らないことによって法的な制裁は受けないんです。しかしPTAや部活動は、独自の制裁手段をたくさん持っている。成績評価とか、いじめっていうのもそうですね。「嫌な空気になる」なんていうのも、けっこうな制裁ですし。
内田:あぁ、本当にそうです。制裁はありますね。「治外法権」って言葉、僕もこれから使わせてもらいます(笑)。
(撮影:梅谷秀司)
※次回は1月11日(月)に公開予定です
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