学校は、なぜ「治外法権」になってしまうのか

巨大組体操、PTAの背景に潜む問題

内田:運動会というのは、そもそも学校の中でもいちばん外側にあるもので、その種目まで国や自治体が規制するのか、という考え方が昔からある。そこに教育委員会が踏み込んだっていうのは、逆に言うと、学校が全然、変わらなかったんだなぁということですよね。

学校は今も目的や合理性ということは、考えていないんじゃないかな。 “自分たちにとっての目的”はあるけれども、子どもたちにとって合理的な理由があるかということは、全然、考えていないんだろうなと思います。

組体操の「一体感」はホンモノか?

内田 良(うちだ・りょう)●名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授。博士(教育学)。専門は教育社会学。学校生活で子どもや教師が出遭うさまざまなリスクについて調査研究ならびに啓発活動をおこなっている。これまで、柔道事故、組体操事故、2分の1成人式、部活動顧問の負担など、多くの問題の火付け役として、情報を発信してきた。ウェブサイト「学校リスク研究所」「部活動リスク研究所」を主宰。主な著作に『教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」』 (光文社新書)『「児童虐待」へのまなざし』(世界思想社、日本教育社会学会奨励賞受賞)などがある。

木村:そもそも組体操って、何のためにやると考えられているんでしょうか?

内田:学校の先生って、「1年間を通じていちばん大事なことは何か」と聞くと、みんな「クラスをまとめることだ」って言うんですよ。組体操というのは特に「みんなでひとつのものを作る、一体感を作る」という象徴的なものなので、先生たちは積極的にやりたがる。

さらにそれを運動会で披露すれば、保護者も喜んで、信頼もかちえるわけですよ。その両方の意味で、先生たちに受け入れられたのではないかと思います。

木村:もうひとつ、内田さんは、先生たちは「一体感」と言うけれども、土台になっていた子たちが本当に一体感を感じていたか?という点も指摘されていましたね。

内田:そうなんですよ。僕は「一体感はできるかもしれないけれど、こんなにリスクが高いよ」と話しているので、そこはあまり踏み込まないようにしているんですけれど……。

でも「実は、一体感そのものもなかったんじゃないのか?」っていうね。やっぱりTwitterなどで寄せられる声を聞いていると、土台をやっていた人たちの苦痛や不満といったら、もう、すごいわけですよ。「ああ、こんなにも“一体感”ってなかったんだ」と思う。

でも先生たちは、本当にみんな口をそろえて「一体感がある」と言う。恐ろしいな、と思います。子どもたちは本音を口にできないですから。

木村:私も、組体操のピラミッドはやったことがないんです。背が高くて筋力がなかったので、監視役だった。見ていて掛け声だけかけるんですよ、「せい!」とか言って。それはやっぱり、土台をやっている子たちから冷たい目で見られていました(笑)。いちばん楽ですからね。

内田:(爆笑)

木村:でもね、監視役だった理由にはもうひとつ、「危なっかしいやつだと思われた」という面もあるのかもしれない(笑)。

たとえばバスケットボールの学校事故の判例(鹿児島地裁平成23年11月22日) で、「乱暴な生徒がいきなり蹴りを入れた」っていう事例があるんです。組体操のときだって、そういう生徒がいないとは言いきれないですよね。もし学校に対して確信的な不満を持つ子どもがいて土台をわざと崩したら、ものすごい事故が起きるわけです。その被害は、バスケットの比ではない。それを考えると、すごく恐ろしいことをやっているなと思いました。

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