学校は、なぜ「治外法権」になってしまうのか

巨大組体操、PTAの背景に潜む問題

木村:そういう意味で、私ももしかすると危険視されていたのかもしれません。こいつを土台にすると……ってことで監視役に。もちろんそこまで悪い人間じゃないですけれども(笑)。

内田:木村さんはないですけど(笑)、そういうリスクも、なくはないですよね。

組体操もPTAも「治外法権」の世界!?

木村草太(きむら・そうた) ●1980年神奈川県生まれ。東京大学法学部卒業、同助手を経て、現在、首都大学東京法学系准教授。専攻は憲法学。著書に『平等なき平等条項論』(東京大学出版会)、『憲法の急所』(羽鳥書店)、『キヨミズ准教授の法学入門』(星海社新書)、『憲法の創造力』(NHK出版新書)、『未完の憲法』(奥平康弘との共著、潮出版社)、『憲法学再入門』(西村裕一との共著、有斐閣)、『テレビが伝えない憲法の話』(PHP新書)、『憲法の条件』(大澤真幸との共著、NHK出版新書)などがある。

木村:私や大塚さん(この対談のライター)がやってきたPTAの問題も、組体操と似ているところがあります。PTAというのもまさに、目的が非常に不明確な組織で、それゆえに何をやっているかわからないまま、平気で人権侵害をする、というところがある。

学校から独立した団体で、完全な任意加入団体であるにもかかわらず、現場では事実上強制で、全員が自動的に加入する形が非常に多いと言われています。

自動強制加入にするためには、当然、学校や保護者から、児童名簿をPTAの側に流さなきゃいけないんですけれど、これは個人情報保護法制に反するわけです。「プライバシーの権利(個人情報コントロール権)」に非常に無頓着なまま、話が進んでいる。

そういう人権侵害を平気でやってしまうんだけれど、本人たちは「悪いことをやっている」という自覚がまったくないところが、学校における人権侵害の特徴だな、と思います。

内田:PTAの問題って、部活動ともそっくりですよね。部活動もそもそもカリキュラムの外にあるものなので、生徒は自由に参加するものだし、先生も任意で指導するってことになる。とりわけ勤務時間外においては。なのに、先生も子どもも参加率が9割を超えているっていう(笑)。

木村:学校では本当によくそういうことが起きるんですね。強制で何かをさせるというのはたいへん恐ろしいことです。その人から時間や自由を奪うわけですから、それによって生じる弊害が非常に大きい。

とはいっても、学校で法律論を振りかざすのには、ある種の限界がある。PTAが任意加入団体であることは、法律家の誰がどうやったって覆らない論点なんですけれども、それを言ったところで現場はなかなか変わらない。部活動についても、強制が違法だとか、学習指導要領に根拠がないということを言っても、影響は微弱であろうことが予測されます。

それはなぜかというと、学校が法治主義の「治外法権」的な場所になっている、ということですね。慣習の中でやっているから、法律というものを守らなくていい場になってしまっている。

内田:治外法権! 本当にそうですよ、それこそ体罰とか、みんなそう。

先生がもし街中で誰かを殴ったら、懲戒免職になることも多い。飲酒運転もそう。でも、学校の中で先生が子どもを何発殴っても、懲戒免職になるのは数千件に1件あるかないか。大体は減給とかで終わっちゃうんです。まさに治外法権。

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