佐藤優の「村上春樹の読み方」が深い、スゴい 100万部「多崎つくる」は、こう読み解ける
村上春樹が100万部売れる理由
井戸:佐藤さんは、新刊『小学校社会科の教科書で、政治の基礎知識をいっきに身につける』の中で、現代は「型破り」の時代だからこそ、まずは教科書という「知の型」を使って「正しい基礎知識」を身につける必要があるとおっしゃっていますね。
佐藤:ええ。武道でも芸術でも何でもそうですが、まずは「型」を身につけるのが大切です。学問も同じで、学校の教科書は、いわば現代における「ひとつの知の型」なんです。もちろんその「型」自体も、学問の進化で変わってきていますが、「型破り」の思考法は、きちんと「型」を身につけた人だからこそできることです。
井戸:「型破り」と「でたらめ」は違う、ということですね。
佐藤:その通りです。その件で、100万部のベストセラーになった村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋)が教えてくれることが非常に大きいんです。
井戸:最近、文庫化されて、また話題になっていますね。
佐藤:優れた作品なので複数の読み方ができるわけですが、この作品からビジネスパーソンが読み取ってほしいメッセージのひとつは、「教科書どおりの『型の知識』を身につけることの大切さとその限界」です。どうすれば「型破りの思考法」ができるのかまで含めて、「『型』と『型破り』の関係性」がじつにうまく描かれています。
井戸:私も読みましたが、そういう深読みはできませんでした。どういう箇所からそれが読み解けるんですか。
佐藤:少し長くなりますが、まずは次の引用を読んでください。村上春樹のこの本が100万部以上売れるというのは、たぶん「ここの部分」が相当、人々の心を惹きつけているからだと思います。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら