佐藤優の「村上春樹の読み方」が深い、スゴい 100万部「多崎つくる」は、こう読み解ける
佐藤:読んだ方はご存じだと思いますが、村上春樹にしては珍しく「名古屋」という地名が出ています。村上春樹は「個人と世界」を書いてきた人です。今回も「日本」という国家はありません。しかし、「名古屋」という地域はあるわけです。
井戸:主人公・多崎つくるとその友達の出身地が名古屋ですね。そして、主人公の多崎つくる以外は、「アカ」「アオ」「シロ」「クロ」とみんな名前に色がついています。
東大に行く力がある「アカ」は「型」を身につけた人間
佐藤:その中の「アカ」(赤松)は、親は名古屋大学経済学部の教授で、本人も本当は東大に行けるほどの力があるものの、「仲間と名古屋に残りたい」から名古屋大学に進み、卒業後は銀行に勤める。ところが3年で辞めてしまい、今は会社を立ち上げ自己啓発セミナーを始めて大成功しています。
佐藤:アカは東大に行けるくらい優秀です。つまり、「型の知識」はしっかり身につけている人間ということです。
井戸:でも同時に、会社の中で命令を受けて従うだけの、「型」にはまる人間にはなれなかったわけですよね。
佐藤:ええ。それがわかったときに、アカは「『型』と『型破り』の関係性」に気づき、「『型』どおりの考えしかできない人間」を相手に、自己啓発セミナーのビジネスをすることを考えつくのです。ここを読めば、「自分の頭で考える人になるヒント」が見えてきます。
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