竹中平蔵氏「だから僕は歴史を学んできた」 今年こそ!歴史を見る「3つのポイント」

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経済学者にはマクロ経済の専門家、ミクロ経済の専門家、財政の専門家、さらにイギリスやアメリカには経済学の社会教育の専門家がいますが、日本には存在しません。

私は経済学の知識を広げるための活動をする中で、ある時、高校と中学の社会科の先生に協力を頂こうと考えました。しかし市場競争という言葉を使った途端、先生たちは、そんなことを教えたら大変なことになるという拒絶反応を示しました。まさしく、理解不足だと思います。

環境国家日本を築いた石油危機

歴史的な出来事、とくに海外からの影響によって起きた歴史的出来事に、石油危機がありました。第四次中東戦争が起き、OPECが原油価格を四倍に引き上げたのです。

その前夜、1960年代に日本は高度成長を謳歌します。当時から、一部の専門家は、中東だけに頼っていると、戦争が起きたときに原油価格は危ういものになるという可能性を指摘しており、「石油危機 今度こそ狼はやってくる」という論文もありました。しかし、しばらくは何も起こらず危機感を持つ人は少なかった。中国でいつかバブルが崩壊すると言われながら、なかなかしないのと似ています。

そして73年、狼はやってきました。日本は目の前が真っ暗になります。石油は一気に4倍になり、生産は低下し、物価は上昇する。不況とインフレが同時にやってきたのです。

そこで日本は、耐え忍ぶという日本の強さを発揮しました。石油を節約する技術を作り、工場はその技術を取り入れる。政府は省エネ投資に政策金をつける、減税するといった支援をし、一丸となって危機に立ち向かいます。

気が付いてみると、日本は世界に冠たる省エネの国になり、環境国家になるのです。アメリカのように石油が採掘できず、西ドイツのように石炭があるわけでもなかった。最も大きな衝撃を受けたことで、日本は資源に乏しいという弱みを、省エネルギーという強さに変えたのです。

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