プロ野球「トライアウト」一発逆転勝負の本質 新ルールは挑戦者にどんな影響を与えたのか
しかし、このルールの場合、早い段階で戦力外通告を言い渡された選手のほうがはるかに動きやすい。球団の都合上、ドラフトやトレード、契約更改が終わった後に選手を獲得することは難しい。
つまり、戦力外を受けた選手を獲得する意思決定は早ければ早い方がお互いにとって良い。こういった経緯から、戦力外通告を発表する日と、トライアウトを実施する日を統一したのである。ちなみに、戦力外通告発表の解禁日は10月1日である。
ルール変更で開催回数が2回→1回へ
前置きが長くなってしまったが、このトライアウトのルールが今年から変更された。戦力外通告を受ける選手は全国にいるため、例えば東京のみで開催する場合、広島や福岡の選手に不公平感が出ることや、開催球団の持ち回りの都合上により、例年は西日本と東日本で1回ずつ、計2回の開催だった。それが、今年は静岡県草薙球場で1回のみの開催となった。
そして、開催回数以外にも、ルールの変更がなされた。これまでは、カウント1-1(1ボール-1ストライク)から始まる試合形式のような勝負だったが、今年はカウント0-0から始まる本来の形になった。これらのルール変更は、トライアウトを受ける側にどのような影響をもたらすのか。
まず、開催回数について触れていこう。
結論から言えば、変更は選手にとってプラスに働くものだったはずだ。
「チャンスが減ったのに?」と思われる方も多いだろうが、私は実際に2回のトライアウトを受験した元当事者として、そう思うのだ。
トライアウトを経てNPBに復帰できるのは、ほんの一握りしかいない。ここ5年間の復帰者の数は以下の通り。
第1回のトライアウト後にどこからも声がかかることなく、第2回後に再契約に至るというケースは、極めてまれである。正直に言えば、2回目を受験する選手達は、心のどこかでそれをわかっている。実際に私も、2回目への参加のモチベーションは非常に難しかった。
それでも戦力外通告を受けた選手たちが、2回目のトライアウトを受けるのはなぜか。