2016プロゴルフ、男女で明暗が分かれた理由 サラ金大会の再来があっていいのか

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まず海外の2つはアジアでの開催。アジアには2つの協会があって、ワンアジア、アジアンツアーと呼ばれている。両方とも協会内が落ち着かず、執行部が変わったりするなど安定していないため、プロモーターも興行として手を出せずにいるという。そうでなくとも、国の政治情勢などの問題で今年はJGTOとの共催試合、マレーシアとインドネシアでの2大会が中止になった。JGTOの担当者は「今後の成り行きがはっきりしない」と頭を抱えている。

国内の1つは新規交渉中といい、もう1つは今年初開催した美容脱毛サロン最大手「ミュゼ」の大会が宙に浮いているという。夏過ぎから倒産、経営破たんといったニュースが出始め、否定しているものの信用を失いつつあるのは確かなようだ。ネットなどを見る限りは、まだ被害者が公には出ていないのかもしれないが、解約の話題などが飛び交っている。

男子は2015年、結局全25試合、賞金総額33億934万円の実績で終わった。2016年は26試合、34億9000万円に増加する予定だとはいえ、重たい雰囲気なのは「はっきりしないもの」を当てにしないと試合数が増えない情けなさがあるのかもしれない。ただ、「ミュゼ」は一般とはいえ社団法人のスポーツ団体であるなら、開催を当てにするのではなく、断るのが筋ではないだろうか。

かつて、日本ツアーもいわゆる「サラ金大会」といわれ、消費者金融のスポンサーが資金力にものをいわせて乱立した時代があったが、高利や取り立てなどが社会問題化してからなくなっていった。ミュゼが今後どうなるかはわからないとはいえ、被害者が出てからでは遅い。試合が増えればいい、賞金が出ればいい、というものではないのは、過去に経験している。

余裕が見て取れる女子ツアー

一方、女子プロゴルフ協会(LPGA)の小林浩美会長の大きな声が、女子ツアーの雰囲気そのままに思えた。小林会長の声を字で表現できないのが残念だが、試合数は38試合に増え、賞金総額は史上最高の35億2000万円に達した。

もちろん、会見は笑顔。新規スポンサーとしてニッポンハムが加わり、北海道・函館で大会を開催する。ニッポンハムはプロ野球の本拠地を札幌に置いて人気沸騰した。北海道という市場が魅力的なのか、今度は女子ゴルフに参入する。日程表にも名の知れた企業が並ぶ。男女ともトーナメント規定などでふるいにかけて、主催者の「品格」を決めているが、男女で温度差があるようだ。

目を引いたのが、4日間大会の増加。女子は3日間大会で賞金総額を低く設定し、試合経費を抑えてスポンサードしやすくしている大会が多いため「男子より参入しやすい」のが、試合の増える一因ともいわれ、増えない男子の言い訳の1つにもなっていた。

経費の膨らむ4日間大会が2試合増の11試合。米女子ツアーでは4日間大会が主体で、選手の実力をちゃんと測れるといわれている。もちろん、五輪も4日間競技になるため「東京五輪までに、半分を4日間大会にしたい。(海外で)日本の選手の才能が発揮されていない。実体験で訓練していく」と小林会長。2020年東京五輪に向けたレベルアップを図る日程編成をアピールした。そのあたりに、男子と違う「余裕」を見て取れる。

表面上は男女とも来年1試合ずつの増加とはいえ、内実は大きく違う。会長が自分のツアーの試合数も把握できないぐらい目先のことも不透明な男子ツアーと、今年はやられっぱなしだった外国勢対策も含めて将来を見据えている女子ツアー。そうした雰囲気は、見ている人にじわじわと伝わっていくものだ。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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