鉄道各社が「座れる通勤電車」を走らせるワケ 毎日が快適度アップ!沿線人口増で増収狙う
さて、2015年の年末繁忙期を迎え、各社のこれらの列車には特徴的な動きがいくつか見られた。 まず、12月5日に実施されたダイヤ改正にて、京浜急行電鉄で「モーニング・ウィング号」の運転が始まった(実際の運転開始日は改正後初の平日である12月7日)。
京急は1992年に2人掛けクロスシートを装備した快速特急(現在の快特)用の2000形電車を利用して、平日夜間に下り品川発の「ウィング号」8本を設定。着席整理券を別途、購入することで着席を保証する列車の運行を始めている。
だが、その他の京急の列車は、快特を含め、すべて特別料金不要で利用できる。それゆえ、着席を保証した列車への「新規参入」施策は成否が注目された。結果は良好で、車両も新しい2100形に代わった後、今は品川発18時45分から22時05分発まで20分間隔で11本が運転されるまでに発展している。
「モーニング・ウィング号」は、その名の通り、初めて設定された朝の上り三浦海岸発・品川、泉岳寺行きのウィング号だ。ただ、運転本数は品川7時28分着の1号と泉岳寺9時22分着の2号の2本に留まる。これは他の会社でも同様であるが、朝は利用が夕~夜間に比べて短い時間帯に集中するため、ピーク時には最大限の輸送力を投入しなければならず、定員が少ない特別な列車のダイヤを入れる訳にはいかないことによる。
運転開始からまだ1ヵ月も経っていないが、京急によると、「12月のウィングパス(前売り1ヵ月分の着席整理券)は、ほとんど完売。実際には、ほぼ満席で動いている列車(1号)もある」とのこと。新しい列車は知れ渡るのに多少の時間がかかるものだが、好調な滑り出しのようだ。
特急車両がない鉄道には負担?
ただ、新規参入組には課題もある。まず、もともと座席指定特急を運転していた会社とは異なり、座席指定あるいは定員制の特別料金券を発売するノウハウや、設備を持っていないことがある。
小田急や近鉄などの場合は、特急券の自動券売機や発売窓口は、もちろん日中や休日の列車との共用である。一方、京急の場合は、「ウィング号」の運転開始に当たり、ウィングチケット(着席整理券)専用の自動券売機を停車駅に設置したが、一般的な自動券売機と異なり、発売される列車は限定的だ。
当然、これも設備投資で、回収の見込みを立てなければならない。それゆえ、インターネット予約やチケットレスサービスに力を入れる会社もある。また、乗車の際には着席整理券の確認を係員が行っており、人件費の負担も増えていそうだ。
また、京急は特別料金を徴収するにふさわしい電車をもともと持っていたが、そうではない会社は、車両を用意する必要にも迫られる。その点が、新規参入がそれほど広がらない要因の一つかとも思われる。
東武鉄道は日光・鬼怒川温泉方面などへの特急を多数運転しているが、東上線にはそうした列車はなく、2008年に定員制の「TJライナー」を池袋~小川町間に設定する際、旧型車両の置き換えを兼ねて50090系電車を60両新製。やはり池袋駅に着席整理券売り場を整えた。
この50090系は夕ラッシュ時の「TJライナー」運用だけだと効率が悪いため、通勤型電車と同じ片側4扉として、座席もクロスシートとロングシートの切り換え可能なものを設置。他の列車にも使えるようにし、初期投資の回収をしやすくしている。
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