鉄道各社が「座れる通勤電車」を走らせるワケ 毎日が快適度アップ!沿線人口増で増収狙う

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帰宅客向けの小田急特急は「ホームウェイ」に愛称を統一

これは退勤客の好評を博し、その後、増発が繰り返されることになる。さらに単なる回送列車の開放から特急型電車の運用の一環に組み込まれるようになり、朝の新宿行きも登場。

運転範囲も大きく広げられて、今やすっかり定着している。18時以降に新宿を出る列車は、行き先を問わず愛称を「ホームウェイ」に統一して、アピールしているほどだ。

小田急の成功は他社も刺激し、同様に座席指定特急を運転していた東武、西武、京成、名鉄、近鉄、南海の各社も、次第にラッシュ時の特急運転に力を入れることとなる。豪華な少数派車両で大きな投資となるにもかかわらず、朝夕は車庫で眠っていることが多かった特急型電車が活用できることも、大きな動機であった。

さらに、財政難にあえいでいた国鉄をも動かし、1984年の「ホームライナー」(上野~大宮間)登場に至る。これはやはり、回送されていた特急型電車を活用して、営業列車に変更。座席は指定しないものの、簡便な方式として、座席の数だけ乗車整理券を発行し着席を保証(定員制と呼ばれる)した列車である。これも人気を集め、JR各社に引き継がれた

「コーヒー1杯の値段」にジレンマ

こうした列車は乗車距離が短い客も手軽に利用できるよう、追加料金が300~500円程度に抑えられており、今日に続いている。「コーヒー1杯の値段で座れる」とPRされることもあった。

安く乗れるのは利用客にとってはありがたい。しかし設定当初、「特急型電車の朝夕のアルバイト」という考えから、「無から有を生めばよい」程度の料金設定にした鉄道会社もあり、安い料金が一般化した。さらにバブル景気に乗って発展し広く支持を得たものの、すぐ不況期に入ってしまい、無闇には値上げできないでいる。

例えば、JR東日本東海道本線の定員制列車「湘南ライナー」は、1986年の運転開始当初、乗車整理券は1回乗車につき300円であったが、1999年に500円にアップ(現在は消費税率改定による510円)しただけ。「湘南ライナー」と同じ185系電車を使っている特急「踊り子」だと、東京~小田原間の特急料金(座席指定)は1450円。着席の保証がない自由席でも930円。頻発している普通・快速のグリーン車(やはり自由席)だと780円(平日・事前購入料金)で、「湘南ライナー」の割安ぶりが際だつ。

このあたりには、ジレンマもあると見る。需要は大きく、増収にはなっているが、経営を支えたり、新たな大規模設備投資の原資になるほどの、大きな収入源になっているとも思えない。運転本数、イコール乗車できる利用客数自体、一般的な通勤通学列車よりずっと少ないのだ。

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