ファッション誌トップシェア、宝島社の女性誌マーケティングの秘密(下)--ライバルは他誌ではなく、あらゆる商品とサービス
今まで出版業界では、雑誌のポジショニングといえば、読者層を年代、収入などのデモグラフィックで分類されてきたが、宝島社では嗜好性やライフスタイル、価値観などでターゲットを設定している。
2つ目は、「既成概念にとらわれない」ことである。宝島社は、出版社も企業であり、出版物は商品と考え、自社のコアコンピタンスをビジネス編集力ととらえている。ビジネス編集力とは、たとえば、ブランドと流通を結び付けて、新しいブランド商品やビジネスモデルの創出を行うなど、情報、知識、技術、企業をつなぎ、新しい価値を生み出す技術のことをいう。
こうした試みは、新しい顧客層を開拓する重要なポイントになっている。また、良いコンテンツを作るだけでなく、商品としての付加価値を高め、商品の完成度を高めていき、その商品の存在をより多くの人に知らせていくことが必要である。
3つ目は、全社で「わかりやすい目標を持つ」こと。社員は、会社のビジョンを共有し、それぞれの部署で同じ方向に向かって活動していくことで、より力を発揮することができる。全社的にマーケティング活動を始めるまでは、明確なビジョンを共有できず、各部門の方向性が違う方向に向いてしまうこともあったが、現在はマーケティング会議という場があり、全社が同じ目標を持っていることで組織としてパワーを集約することができている。
フラットな組織が強みの企業風土
もともと宝島社は、上下や部門間の垣根が低く、フラットな組織が強みでもあり、トップも社内のコミュニケーションに最も力を入れている。情報化、効率化を重視し、職場環境の整備にも力を入れ、最新の情報機器を導入するなどインフラ整備にも積極的に行っている。社員はつねにプロデュース型、コーディネート型の仕事をすることを第一に考え、一人ひとりの生産性を重視して仕事をする。
また、2013年度に、7年ぶりに新卒採用を行うというくらい中途入社の社員が多い。商社やメーカーなど他業種からの出身者が多く在籍しているので、ビジネス感覚を持ちながらもクリエーティブな仕事ができている。