ファッション誌トップシェア、宝島社の女性誌マーケティングの秘密(下)--ライバルは他誌ではなく、あらゆる商品とサービス
電子書籍やネットメディアの台頭、少子高齢化などで構造不況業種とも言われる出版業界。そんな不況下にあって、異例の好調ぶりを見せるのが宝島社。好調の秘密はどこにあるのか、マーケティング本部部長の桜田圭子氏がそのノウハウを明かす。その3回目(最終回)。
マーケティングの仕組みを導入して以降、宝島社は、ファッション誌の出版社別シェアにおいて2年連続で業界トップとなった。また、個別の雑誌においても、『sweet(スウィート)』が全ファッション誌で1位になったほか、男性ファッション誌『smart』(スマート)』、30代女性誌『InRed(インレッド)』、40代女性誌『GLOW(グロー)』も、各ジャンルで一番誌となっている。また、OLをターゲットにした、『steady.(ステディ.)』は、前期比117.9%と、他社刊行を含むすべてのファッション誌の中でもナンバーワンの伸び率を記録した。『sweet』は4年間連続で日本一売れているファッション誌となった(いずれも一般社団法人日本ABC協会資料より)。
マーケティングの3つのポイント
多くの女性の心をつかみ、読者を増やし続けるマーケティングのポイントは3つある。
1つ目は、「雑誌のライバルは雑誌ではない」という発想。雑誌は嗜好品であって必需品ではないので、ブランドスイッチなどという購買行動は想定していない。
「買う」か「買わない」かの二者択一となるため、競合商品は、他の雑誌ではなく、女性が「時間」と「おカネ」を使う、すべての商品やサービスが競合になる。たとえば『sweet』のライバルは? と尋ねられれば、「スターバックスのトールラテ」と答えるように。
また、雑誌にとっては「世界観」も重要な要素だと考えている。雑誌という新しい媒体を出すことで、新しい「世界観」や「価値観」を生み出し、確立し、いかに読者へ提供できるかも大きなテーマとなる。
今いる読者を他誌と奪い合い、囲い込むのではなく、“普段、雑誌を読まない人”をターゲットにしたマーケティングが重要であり、業界全体の活性化のためにも雑誌から距離のある人に向けた宣伝やPR活動を通じて、新しい読者を発掘する必要がある。