相続税対策で借金苦!実家相続の「落とし穴」 慣れないマンション経営で大変なことに

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結局このマンションは、空室も埋まらないうえ、勝手に下げられた賃料で入居した人も多いため、投資した資金も回収できなくなり、現在売却の方向で動いているものの、空室率の高さがネックになってなかなか買い手が決まりません。

Hさんは、「こんなことになるなら、実家を壊さずにそのまま人に貸しておけばよかった。そうすれば、借金を背負うこともなかったのに……」と後悔しています。

世の中には、「実家を活用する」と聞くと、マンション・アパート経営を思い浮かべる人がたくさんいますが、Hさんのように、問題を抱えるケースも多いのです。

高齢での借金は必ず子どもに及ぶ

今、ハウスメーカーが、土地や物件を持っている高齢者の方に懸命に営業をかけていますよね。「相続税対策をした方がよいのでは」「お子さんのためにも資産を遣いましょう」といった言葉に心が動くのもわかります。ご相談者も、お子さまのためを思ってのご決断だったことでしょう。

しかしまず、このケースで間違いだったのは、60歳という年齢で3000万円という借金をしてしまったことです。この年での多額の借金は、経営がよほどうまくいかない限り、お子さんの代まで引き継がれる可能性が高いでしょう。お子さんがもう成人されているのであればマンション経営をすることについて話し合うことが必要でしたし、まだ子どもであったとしてもその子に及ぶ影響をよく考えるべきだったと思います。

もうひとつの間違いは、自宅から遠いところにマンションを建ててしまったことです。

多くの高齢者は、「自分はまだまだ大丈夫」と根拠なく思っているものです。けれど人間、年を取り体の機能が弱くなっていくことは自然の摂理。たとえ今は現場に行けたとしても、年齢が上がればそうはできないときがやってくる可能性があるわけです。そうなれば、必然的にマンション管理を管理会社に一任することになります。このケースの不動産会社はかなりの悪徳でしたが、ここまででなくても自分の目の届かないところで経営をするということのリスクを知っておくべきです。人に任せるということは、決して解決策ではないのです。

つまり、“自分で現場をきちんと管理する”か、“任せた相手を管理する”かの違いだけということ。この点を見誤ってはいけません。

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