損保ジャパン日本興亜、海外M&Aで大失態 世界5位再保険会社の持分会社化を断念
スコールの意向を無視して敵対的買収に打って出たのでは、スコールの経営陣や内部人材の流出、顧客の離散などで、価値は失われ、元も子もない。実態はSOMPOが甘い見通しの結果として、「白旗をあげた」ということだろう。
「最初の時点ではある程度、両社で持分会社化の方向では了解があった」とSOMPOの関係者は打ち明ける。それが途中から方向がおかしくなり、「スコールが交渉の中でスタンスを変えてきた」というのだ。具体的には、同業他社からの横槍があったことをこの関係者は強く匂わせる。
しかし、M&Aでは当然に必要な、首脳同士の会談すらなかったようだ。真相は藪の中だが、スコールのデニス・ケスラー会長兼CEOとSOMPOホールディングスの櫻田謙悟グループCEO取締役社長が「少なくとも、今回の構想を発表する前に会って話をした形跡は見えない」と業界関係者は言う。
英キャノピアス買収に当たっては、正式の合意締結に向け、交渉中の合意締結前の13年のある時点で櫻田社長がキャノピアスのマイケル・ワトソン会長とロンドンで会談し、「早いうちに結論を出そう」と合意した裏話が、SOMPOのリクルートサイトに載っている。
なぜ、こんな失敗をしたのか。SOMPOに焦りがあったことは確かだ。
ライバル損保は海外M&Aで成果挙げる
日本のメガ損保の海外M&Aの流れは加速している。
2005年にMS&ADインシュアランスグループホールディングスは英アヴィヴァの東南アジア損保事業を買収。東京海上ホールディングスも2008年の英ロイズ損保大手キルンに始まり、米損保フィラデルフィア、米生損保併営デルファイまで活発な買収を行った。両グループのM&Aは海外事業の拡大をもたらし、成功を収めたといえる。さらに今年、東京海上は米損保HCCを9400億円で、MS&ADが英ロイズ損保2位のアムリンを6400億円で買収すると発表している。
失敗に終わった今回のプロジェクト。事後処理が残っている。
SOMPOはすでにパティネックス社が持つ8.1%相当に加え、市場からの購入などもあわせ9%相当、日本円で約700億円分のスコール株を取得済み。この株をスコールが買い取ることは考えられず、市場での売却がSOMPOの基本方針。3月の発表後に株価が上昇したのとは逆の理由で今度は9%もの大量売却となれば、株価には下落圧力がかかることになる。
損失が出れば、焦って失敗に終わった今回の投資判断について、経営陣は株主から責任を問われることになるだろう。
SOMPO首脳は2016年度から始まる次期中期経営期間の内には、「1兆円の投資も可能」と発言している。ただ、市場から本当に評価されるためには、まずは、今回の失敗から学習する必要がある。
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