損保ジャパン日本興亜、海外M&Aで大失態 世界5位再保険会社の持分会社化を断念
「なぞのM&A」――。発表当初から、この構想に対しては業界他社からいぶかる声が上がっていた。
まず、その狙いがよくわからない。
記者への説明でも発表直後の株式アナリストとの電話会議における質疑応答でも、会社は持分会社化による利益の取り込みを主要な狙いにあげていた。シナジー効果を問われて、「現時点で、シナジーにより再保険分野で何らかの経済効果を見込む計画はない」と答えている。本当に意味のある投資なのか、という本質的な疑問がわく。
持分会社としてその利益を連結会計に取り込むだけなら、それ自体は、いわば見せ金。取締役を仮に1名派遣することができても、15%程度のマイナー出資では経営への関与は限定的なレベルにとどまるだろう。配当の形ではキャッシュが入ってくるものの、その投資に対するリターンは4%台。その程度ならROE10%超の海外の優良損保の買収にカネを振り向けたほうがよい。
スコール側は望んでいなかった
実現性にも当初から懸念があった。SOMPOとスコールの両社間には利害の対立がある、との指摘が業界関係者からでていた。
スコールは資金や格付けなどで補完が必要な状況にはない。投資の出口を探していたパティネックスに代わって、SOMPOが安定株主となることは許容範囲かもしれないが、SOMPOの持ち分会社となることは、認めがたい。
なぜか。世界中の保険会社と長期取引をするグローバル再保険会社にとっては、顧客たる保険会社とは等距離外交を保つことが、得策だからだ。特定の保険会社の色がつくことは営業戦略上マイナスなのである。ミュンヘン再保険、スイス再保険などトップクラスの再保険会社で損保会社のグループ会社になっているところはない。
実際、3月6日のSOMPOの発表直後に、スコールが出したリリースもそのことをうかがわせる。SOMPOの持分会社化の方針の報告を受けたという事実を挙げた上で、「スコールはこの(SOMPOが株を買い取る)取引には関係していない」「スコールは独立の会社として、ほかの株主同様に同じ権利と責任を持つ長期株主としてのSOMPOを歓迎する」と淡々としたものだ。
海外の報道は「スコールが拒否している」など両者間の交渉が難航していることを伝えていた。スコールはSOMPOのライバル損保会社や共済などとも取引があるので、この間も「SOMPOの持分会社になるなら取引を見直す」という声が出ていたと思われる。
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