日産、間接支配を狙う仏政府へ対抗できるか ルノーへ日産との経営統合を要請していた
日産自動車が仏自動車大手ルノーへの追加出資を検討していることが明らかになった。「国益」を理由として日産・ルノー連合の経営への関与を強める仏政府に対抗する新たな動きとして注目を集めている。
ルノーの筆頭株主である仏政府は、2015年4月の株主総会までに出資比率を19.74%に拡大。株式を2年以上保有する株主に倍の議決権を与える通称「フロランジュ法」によって、2016年春に議決権は約28%に拡大する。
日産はルノーに15%を出資する第2位株主だが、仏商法の制限によりルノーの議決権を持たない。一方の仏政府は、失業率が10%台と高止まりする中で自国の雇用の維持に躍起になっている。議決権拡大で仏政府が連合の経営への関与を強めることについて、ルノーと日産のCEOを兼務するカルロス・ゴーン氏は「2社の提携効果が失われるリスクがある」と懸念を表明している。
仏政府はルノーに日産との経営統合を要請
連合は仏政府に対し、買い増したルノー株を売却し、出資比率を従来の15%程度にまで戻すよう求めているが、仏政府に売却の動きはない。それどころか、11月に入って、マクロン経済相がルノーに対し、日産との経営統合を要請していたことも明らかになり、仏政府と連合の間には緊張が高まっていた。
事態打開に向けて日産が打ち出したのは、日産のルノーへの出資比率を25%以上に引き上げることで、ルノーが持つ日産株43.4%の議決権を停止させるというものだ(右図のシナリオ1)。11月30日に開いた臨時取締役会で議論したとみられる。ルノーを通じた日産への間接的な介入を阻止するという、いわば日産の「自衛策」とも言える。
この戦術について、企業のM&A(合併・買収)に詳しい早稲田大学大学院の服部暢達客員教授は「ルノーとしては、日産から配当金が今後も入るが、助けた会社の議決権がなくなるのは何のための投資だったのかということになり、到底容認できないだろう」として、実現可能性は低いと分析する。
これに対して、ルノーが検討しているとみられるのが、ルノーの日産への出資比率を40%未満に引き下げることで、日産に議決権を付与するという策だ(右上図のシナリオ2)。仏政府の議決権を相対的に薄めることができる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら