超売れっ子になる人に共通する「6つの法則」 累計6000万部を売った編集者は見た!

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3、背伸びせず、自分のプレイスタイルに徹する

成功者は「自分にできること」と「自分にできないこと」を知っています。実は小説の中身も同じで、たとえば大ヒット作家でもあらゆるジャンルの小説を自在に書けるわけではありません。恋愛小説が得意な方もいれば、ミステリーだけは書けない方、逆にSFしか書けません、という人だっているでしょう。

僕の担当作家の入間人間さんは、「恋愛や独特な世界観を描くことは出来るけど、戦闘描写や深い考証を踏まえたサイエンスフィクションは自分には向いていないことを分かっている」とおっしゃっています。

これは敗北宣言でもなんでもありません。たとえばプロ野球選手なら、常にホームランを狙っていく長距離バッタータイプか、単打を量産する打率指向タイプかを自己分析した上で、そのプレイスタイルに特化した練習を自分に課しています。小説家も同じで、成功する作家は自分の得意な分野を理解しています。実力不足なのに見栄を張ったりせず、自分のプレイスタイルに徹することが、もっとも良い作品を書ける手段なのだと知っているのです。

一方、「何を書いたらいいかわかりません」という作家は危険です。プレイスタイル(作風)を持っていないだけでなく、作品の根本に流れるテーマや思想(エンターテイメントに必要不可欠なそれを、僕は「作家の性癖」と表現しています)が欠落しているわけですから、人を感動させるものを作れるわけがありません。「自分はこれがやりたいんだ!」という強い信念がなければ、成功は遠のいていきます。

4、自分が書いたキャラクターが、作者の意志を超えて動いている

作家が物語を創り上げていくうえで、もっとも大切にしているものは、「編集者の顔色」……ではもちろんありません。「自分自身のこだわり」、でもありません。だとしたら、「読者の意向(ニーズ)」でしょうか? 実は、そうでもないのです。もっとも大切にしているもの、それは自分が生み出した「キャラクターの気持ち」です。

僕が作家と打ち合わせをしているとき、物語の展開として○○か××、どちらを採るか二者択一の決断をしなければならないことがよく起こります。その最終的な判断は、編集者の知識に基づくアドバイスでも、作家による鶴の一声でもありません。作中に登場するキャラクターが本当にそういう行動をとるかどうか、それがキャラクターにとって違和感のない行動かどうか、で決まるのです。そして、その判断指針に基づけば、作家自身のやりたいことすら出来ません。

「私はこういう展開にしたいんですけど、キャラがそう動いてくれないんです」といった会話が、僕の打ち合わせではよく出てきます。自分が創造したコンテンツであるにもかかわらず、作中の物語が「勝手に」動き出していて、ベストセラー作家ですらそれを制御することができない……それくらいのパワフルさがあるかどうかが、ヒットするひとつの要因になっていると考えています。

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