《ミドルのための実践的戦略思考》「範囲の経済」で読み解く化粧品メーカーの営業所長・藤本の悩み

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例えば総合商社という業界がありますが、ご存知の通り、総合商社は「ラーメンからミサイルまで」と揶揄されるように、一見全く関係ないビジネスを同じ会社の中で手広く手掛けています。

普通に考えれば、「選択と集中」という言葉を出すまでもなく、戦う場所を明確に決めてそこにリソースを集中投下して戦う、ということがセオリーのはずです。では、なぜ総合商社はこのような形態を取っているのでしょうか?

その裏側にあるのが、この範囲の経済のメカニズムです。つまり、総合商社は、とある共通の社内資産をベースに、様々なビジネスを乗せて、範囲の経済を効かせているのです。その共通部分とは何かといえば、先人達が築いてきた異国での人脈や情報網、もしくは各地でビジネスをやるために必要不可欠な法務や物流等に関するビジネスノウハウです。

例えば中国のとある地域で工具を販売するビジネスをしていたとしましょう。そこに必要なものは、工具に関するノウハウもさることながら、現地の商習慣であったり、現地の有力な権力者とのコネクションであったり、はたまた現地の言葉を話すことが出来るスタッフであったりします。

しかし、この部分は、工具販売に限定されたノウハウではありません。他のビジネスにおいても、この地域でビジネスをする限りにおいては汎用的に必要になるものです。したがって、一度築いたこのノウハウをインフラとみなして、その上に違う商材を乗せることが出来れば、全く新しいプレイヤーが参入してビジネスをするよりも、コスト効率の高い仕事ができるのです。

更に、顧客接点も有効活用しています。例えば新興諸国において一度接点を築いた顧客がいるとします。その顧客は、これから拡大を目指していくためには、当該ビジネスのみならず、モノを運ぶための物流機能や資金調達、別の資材調達など、様々な必要性に直面します。そこに総合商社が取り扱っているビジネスラインの幅が生きてくるのです。

総合商社は過去の歴史から長らく全世界にこういった社内資産や顧客資産を築いてきました。一度そのようなものを築いた総合商社にとっては、「出来るだけ商品やサービスラインナップを広げた方が、経済性がある」ということになるのです。つまり、総合商社のビジネスの裏側には範囲の経済の原則がある、というわけです。


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