《ミドルのための実践的戦略思考》「範囲の経済」で読み解く化粧品メーカーの営業所長・藤本の悩み

■理論の概説:範囲の経済

今回は、前回「規模の経済」の延長線上で、「範囲の経済」という言葉について理解を深めていきましょう。「範囲の経済」は、「規模の経済」と比べてそれほどメジャーではありませんが、経営に携わる上で理解しておくべき原理の一つです。

一般的な製造業を例に考えてみましょう。既存の工場ライン、研究開発、構築済みのチャネル網といったものは、商品がどれだけ売れようが同じだけ固定的にコストを発生します。前回ご紹介した通り、「規模の経済」は、生産個数を増加させることにより、1個あたりにかかる固定コストを低減させようとするものです。

一方で、今回ご紹介する「範囲の経済」というのは、新しい商品ラインナップを加えることによって、1個にかかる固定コストを低減させようとするものです。規模の経済が、商品の「生産規模」を増加させることによって1個あたりのコストを低減させるのに対し、範囲の経済は商品の「種類」を増加させることによって1個あたりのコストを低減させる、とも言い換えられます。

つまり、範囲の経済は既存資源の多重利用ということであり、一般的には「シナジーを効かせる」ということとほぼ同義でもあります。

ということで、概念自体はそれほど難しいものではありませんが、実はその奥は深いものがあります。また、その一方でどの経営書においてもあまり丁寧には解説されていないため、ここで改めてその概念とパターンを整理しておきたいと思います。

※なお、今回の説明では、話をシンプルにするために、「1個あたりの固定費低減」ということを中心に、範囲の経済を説明しています。ただし、規模の経済と同様に、商品ラインナップ拡大によって例えば調達時の交渉力が発揮できるようになり、「変動費面におけるコスト優位につながる」、という側面もあります。このメカニズムは、ほぼ「規模の経済」と同じことなので割愛しましたが、興味のある方は詳しくは前回の掲載をご参照ください。

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