病院には付添う家族のための宿泊設備が整備されています。病院までの交通費や車のガソリン代まで、かかった費用はすべて退院後に戻ってきます。退院する際は医師、看護師の医療スタッフと自治体の福祉担当者が家族と話し合い、退院後の自宅での快適な療養生活が保障されるシステムができています。
「デンマーク人は保険にも入らないし、貯金もしない」と言われていますが、この話はあながち間違いではありません。安心・安全な生活が保障されていますので、自分で保険に入る必要性はあまり感じません。老後に備えて貯金に励むという意識も希薄です。まさに「ゆりかごから墓場まで」の福祉が、現実のものとして整備されている国なのです。
満足度100%の医療サービスはどこにも存在しない
ところが、実はデンマークの医療サービスは、日本人がイメージしているものとは大分異なります。
例えば、風邪をひいて家庭医で診察を受けても、多くの場合「3日も寝ていれば直る」と言われて薬も出してくれないようです。夜間に具合が悪くなり緊急病院に運ばれても、痛み止めの応急処置をされて自宅に帰されることが多いようです。翌朝になっても回復しなければ、改めて家庭医で診察するために訪問予約を取らねばなりません。
もし日本人がデンマークで医療サービスを受ければ、おそらく抱いていたイメージが裏切られることになるでしょう。外国からの移住者たちも、当初、家庭医や病院の対応に面喰らってしまうようです。しかし、これは何もデンマークの医療サービスの看板に偽りがあるというわけではありません。そもそもの考え方の違いなのです。
風邪をひいた程度では薬を出さない一方で、生命にかかわる病気の際には惜しみなく無制限の治療を提供するのがデンマークの医療制度です。いざという大きな病気の際には、何ら治療費を心配することなく十分な治療を受けられる、と安心して生活できることがこの国の幸せです。だからこそ、デンマーク人は高い税金を払うことに納得し、満足しているのです。
ではこのようなデンマークに、日本のような民間の医療保険は存在しないのでしょうか。
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