ふるさと納税ブームに潜む地方衰退の「罠」 無視できない、3つの大きな歪みがある

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さらには、正規価格で購入していた商品をただ同然で配ってしまうことで、新規顧客のみならず既存顧客にも影響が生じかねません。

地方産品の販売を通じて地域活性化を図るのであれば、妥当な価格をもって営業をし、販売を積み上げなくてはなりません。安売りを担保するための販促費用を税金から出してもらうことは、本来の競争力をそぎ、地方の衰退を加速させてしまう補助金と同じ作用を生み出します。

(2) 地元産業の「自治体依存」の加速という歪み

さらに、地元産業がますます自治体依存になっていく歪みが生まれます。

自治体が受け取るふるさと納税額は大きくなるにつれ、「返礼品」として地元企業・生産者から買い取る商品総額も大きくなっています。税制によって財源が確保されるわけですから、地元企業・生産者にとっては自治体にまとまって商品を買い取ってもらえる「おいしいビジネス」です。地方自治体も他の自治体に出し抜かれるな!と躍起になっていますので、地元から良い商品をばんばん調達して返礼品に並べています。

一部生産者はふるさと納税の短期的な売上を優先してしまい、従来の卸先への商品数を減らして、返礼品に充ててしまったりします。地元で毎年何億円を買い取ってもらえる新規市場というのは、地方の中小零細企業・生産者にとって決して小さくないのです。

このような事態は、地元企業・生産者の自治体依存度を高めることになっています。

今後、危惧されるのは「変動への対応」です。

ふるさと納税も競争があります。各自治体への納税額が、未来永劫右肩上がりになるわけがありません。急増すれば反動もあり、アップダウンが生じます。ふるさと納税が減少し、返礼品売り上げが500万円あったものが、翌年50万円に落ち込む生産者が現れることも十分に考えられます。そのような変動が生まれた際に、地元企業・生産者にとっては決して小さくないインパクトとなり、経営が左右される要因にもなります。

(3) 納税増加=歳出拡大という地方自治体財政の歪み

そもそも地方自治体は地元から得られる税収が少ないため、独自財源となる「ふるさと納税」による税収増は魅力的です。現在では地元税収を超えるふるさと納税金額が集まる自治体さえ出てきているため、後に続けと躍起になるわけです。また、ふるさと納税財源の半分を地元企業・生産者からの返礼品購入として使うことも、政治的にも地元から支持されやすい。そのため、自治体はふるさと納税獲得競争に躍起となります。

しかし問題は、ふるさと納税を獲得すると、そのまま「その予算をどう使うか」という話になってしまうことです。一過性の歳入にもかかわらず、毎年予算が必要な住民サービス系(福祉、医療、交通、活性化イベントなど)の事業を立ち上げ、歳出を増加して人口獲得を目指す「サービス合戦」も加熱しています。

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