ふるさと納税ブームに潜む地方衰退の「罠」 無視できない、3つの大きな歪みがある

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なぜ補助金をもらっても地方は衰退するのか」で指摘したとおり、従来通りの予算を使い切る競争をしていたら、ふるさと納税が地方にいったところで、活性化なんて不可能です。それどころか、人口縮小社会が到来している中、衰退を加速させることになってしまいます。

税制優遇をもとにした、地方産品の安売りをして獲得金額を競うような誰でもできるような画一的な競争を通じて、一時的な税収増を実現したり、地元産品が流通しても副作用のほうが大きくなっていきます。早期に、納税額に対する返礼比率見直し、各企業・生産者からの調達総額上限の設定、さらに納税財源は自治体のコンパクト化に活用するなど、改善が求められます。

本当に必要なのは「継続的に稼げる仕組み」

そもそも地方が独自の魅力を作り出し、維持していくのに必要なのは「短期的なもらうお金」ではなく、自分たちの価値観を持って「継続的に稼げる仕組み」です。

自分たちの地域のビジョンをもとにした事業企画のために資金調達方法として活用する自治体もありますが、まだまだ少数です。今後は、中山間地や離島、一定規模の地方都市、それぞれの資源状況に沿って、納税者も居住者も地元企業もメリットを生み出す新規の事業企画を出さなくてはなりません。活性化を目指す限り、予算を獲得して使い切るのではなく、ちゃんと収支が拡大する「事業」でなくてはならないのです。

自分の頭で考えず、国が作った制度に則って同じことをやってきた結果、多額の税金を使いながらも地方が衰退してきたことを忘れてはいけません。「ふるさと納税」でも同じことやってどうする、という話です。

地方の多様な成長は、これまでのように税金が一度集められ、一部の人たちの価値判断によって地方に分配されるだけでは難しい。個々人が一部納税先を選択できる仕組みは、多様な価値観にもとづく成熟した社会の実現にはプラスです。

だからこそ、決して返礼品で釣り、釣られるような浅はかなやり方ではいけないのです。

木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年東京生まれ。1998年早稲田大学高等学院入学、在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長就任。2005年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業の後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学、在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。2008年より熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地でまち会社へ投資、設立支援を行ってきた。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。内閣官房地域活性化伝道師や各種政府委員も務める。主な著書に『稼ぐまちが地方を変える』(NHK新書)、『まちづくりの「経営力」養成講座』(学陽書房)、『まちづくり:デッドライン』(日経BP)、『地方創生大全』(東洋経済新報社)がある。毎週火曜配信のメルマガ「エリア・イノベーション・レビュー」、2003年から続くブログ「経営からの地域再生・都市再生」もある。

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