ラジオには、まだまだ大きな可能性がある

南海放送、CBCラジオが好調な理由とは?

また、ラジオは以前の3分の2のスペースに引っ越した。通路の幅がテレビの半分になったが、これで家賃を削減できる。現在のラジオのサイズ感を認識し、自分たちで利益を出して成長したら広いところに移ればいい。これも分社化したからできたことだ。ただ、分社化がすべていいわけではない。エリアのサイズ、局の特性によって変わってくるだろう。

では、我々はなぜ3年連続で増収できたのか。レギュラータイム、レギュラースポットは決して上向きではない。増収の理由はただ一つ、商品を作り続けているからだ。制作は土日も出てイベントを行い、特番を作り、それを営業が必死に売っている。先ほど述べたように、スペースをただ売るのではなく、コンテンツにからめた商品を売っていく。基本的に企業の宣伝部の予算にラジオは組み込まれていない。このスペースです、と言っても買ってくれないから、今までにない商品を提示し、魅力を伝えて売っていく。3年続けているが、かなりきつい。社員には走り続けているしんどさがあると思う。

分社化の際、会長の大石から出された宿題があった。ラジオのメディアとしての価値に対して、広告媒体としての評価が低すぎる。その乖離を埋めることだ。これは業界共通の悩みだと思う。では、リーチのコストとしてラジオは高いのか安いのか。例えば、ヤフーのページ右上の広告は「ブランドパネル」と呼ばれ、2500万円で5000万回表示される。一回あたり0・5円だ。CBCのエリアで一人当たりのリーチを計算すると、ラジオのコストのほうがはるかに安い。ただ、ネットは広告をクリックして自社サイトに誘導できる利点がある。一方で、BS―TBSの「吉田類の酒場放浪記」は、世帯視聴で換算すると2〜3%だという。一人に対するリーチを考えると、ラジオより安いかもしれない。自分たちのエリアでのリーチのコストを厳密に考えないといけないと思う。

付加価値を「見える化」する

升家誠司(ますいえ・せいじ)/1958年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。81年中部日本放送株式会社に入社。ラジオ制作、テレビ制作を経て、2003年東京支社テレビ編成部長、05年テレビ編成局編成部長。経営企画部長を経て、11年にラジオ制作を業務受託していた関連会社(株)テクノビジョンに出向、取締役。同社は12年に(株)CBCラジオに社名を変更、13年4月1日、中部日本放送からラジオ免許を承継して放送局として独立。同日、代表取締役社長に就任

日本のラジオ広告費のピークは約2400億円。それが昨年は約1200億円と半分に減っている。それに対してテレビはピーク時に比べて88%にしか減っていない。ラジオはセッツインユースの減少に比べて、はるかに売上の減少が大きいのだ。これはラジオのスポットがもともと高すぎた可能性がある。リーチメディアとしての価格調整で、今ちょうどよくなったのかもしれない。

若者のラジオ離れが嘆かれているが、わが社の反省としても、若者向け番組を作っていなかったのだから当然だ。それで去年4月、14年ぶりに平日夜10時の「ナガオカ×スクランブル」を立ち上げた。わかったのは中高生が昔と変わっていないことだ。大人の好みは多様化しているが、中高生は意外と均質で、友達、恋愛、家族、受験が主な興味の対象になっている。この世代にもう一回挑戦して、きちんとしたコンテンツを届け、ラジオを刷りこむことが大切だ。名古屋に本社があるメニコンは10代を重視している。なぜなら10代でメニコンを使った人は、死ぬまで使い続ける可能性があるからだ。

実は若者番組を始めるきっかけの一つは、会議での営業部長の発言だった。私はラジオに来たとき、編成の改編会議に営業も出るように言った。営業は自分の意見が通ると、自分で売らないといけなくなるから、最初は黙っていたが、だんだんと発言するようになった。私が「夜はなぜこんなにスポンサーがついていないの」ときくと、その40歳の営業部長は、「そういえば入社以来、夜を売れと言われたことは一度もないですわ」と言う。既に十数年前から、夜の若者向け番組は聞く人が少ないから、大人向けに力を入れて聴取率を取るという戦略になっていたのだ。

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