ラジオには、まだまだ大きな可能性がある 南海放送、CBCラジオが好調な理由とは?

拡大
縮小

ここから思わぬ展開が生まれた。愛媛県では毎年11月23日に中学駅伝が開催され、ラジオで生中継している。祝日だが、編成上は平日なので、テレビでの生中継は難しい。すると一昨年、県内の全CATVから、画面は作るからラジオの放送を流してほしいと言われ、カメラとその人員はCATV、あとはうちが担当して生中継した。テレビを見ている人にラジオの存在を意識してもらう手段になればと思っている。

2014年12月、南海放送は北日本放送、南日本放送とともに、全国のAM局で初めて、FM波での放送を開始した。このFM補完局の設立は災害対策が第一の理由ではあるが、ラジオの将来に大きく関わってくると考えている。

今後20年、我が社のAMラジオには、送信機の更新など、技術的な費用が20億円かかる。一方、今回のFM補完局の費用は約5億円弱だった。技術陣に聞くと、AMとFMの送信機の値段は10対1ぐらい違うという。しかもFMはメンテナンスが安価に済むので、長いスパンで考えれば、AMの20億円に対して、FMは5億円+2億円ぐらいで済む。あくまでも妄想だが、ワイドFMの受信機が県内に出回るであろう20年以内に、AMからFMに切り替えることも考えられる。10億円以上が浮く計算だ。

南海放送はradikoも早くからスタートさせた。他局のトップからは、「それで、儲かったかね」とよく聞かれる。2004年から2010年まで活動した日本ラジオ広告推進機構(RABJ)もすばらしい団体だったが、やはり各局のトップは、「加入したのに収入が上がらない」と文句を言っていた。

どちらも新しい考え方を創造し、メディア価値を上げるためのものであり、すぐに数字に結びつくものではない。こうした話を各局のトップとしていて思うのは、部長、局長クラスがきちんと将来を見据えた情報を上げていないのではないかということだ。何か言うと、「またラジオか」と嫌がるトップもいるかもしれないが、ラジオ現場の管理職は、建設的な提案や進言を、ぜひ上にしてほしいと思う。

<続いてCBCラジオの升家誠司社長のプレゼンテーション>

ラジオの分社化と増収の理由について話したい。CBCは2013年にラジオを分社化し、翌2014年に東京以外の放送局で初めてホールディングス化して、テレビも分社化した。これは会長の大石幼一がさまざまな視点から総合的な判断で行ってきたことだが、私にとって分社化の理由は、ローカルテレビとローカルラジオではビジネスモデルが違うからだ。CBCテレビの自社制作率は25%弱、ラジオは80%だから違って当然だ。ラジオがメディアとして強かった時代は、どちらも同じ広告モデルだった。いい番組を作り、多くの人に見たり聞いたりしてもらって間のスペースをCMで埋める。いわばスペースビジネスだ。しかし、現在はそれで採算が合う時代ではなくなっている。ラジオはスペースビジネスから、コンテンツをどうお金にしていくかという段階に入っている。

分社化でコスト意識改革

分社化して可能になったことがいくつかある。一つは、去年、ラジオマスターの更新を前回の3分の1の経費で済ませた。ラテ兼営局の技術部門はテレビと同等のクオリティを求めがちだ。悪いことではないが、ラジオのサイズ感には合わない。そこで、マスターの機能について、費用を含めて技術と制作が話し合った。制作の要望に技術が応えていくと、コストはどんどん上がってしまう。そこで、例えばこの機能を加えると500万円かかる、と制作側に知らせると、自分たちの制作費の何倍、何十倍もの費用を機械にかける必要があるのか、真剣に考えるようになる。結果として更新費を削減することができた。

次ページオフィスを小型化
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT