伊東屋で売れる「ちょい上」ボールペンの秘密 膨大なペンの中でなぜこれがトップ商品に?

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この軽やかな書き味の秘密は、選び抜かれた低粘度油性インクのリフィルにある。「2008年頃から筆記抵抗の低い低粘度油性インクが流行し始めていたこともあり、この軸に合うものを、日本を始め東南アジア、ヨーロッパと探し回った」と、開発を担当した伊東屋タイムバリュー商品部の金丸修二さんは、当時を振り返る。

採用したのは、筆記具マニアにもファンの多いドイツ製の「イージーフロー」だ。「いちばん書き味が良かった。このリフィルを採用したのは国内ではうちが初めて」と金丸さんは話す。

疲れない理由は、重量バランスだった!

リング(中央の金属部分)に重心を置いているので、ここを指に載せるとバランスがとれる

そして、書きやすさを実現しているもうひとつの鍵は、「重量バランス」だ。重みは高級感を醸し出す重要なファクターだが、長時間の筆記では疲労の原因にもなる。書きやすさにこだわった金丸さんは、この重量感にいちばん気を遣って模索を重ねたといい、こう力説する。

「リング(中央の金属部分)を指に載せるとバランスがとれるんですよ。つまり、リングに重心があるわけですが、こうすると重さを感じず疲れにくいのです」。

さらに、リングからペン先までのグリップ部分は、誰がどこを持ってもフィットするよう配慮したという。

今回、取材時にNO.3を一時間半に渡り使用したが、確かにこれといった疲労を感じなかった。少なくとも筆者がかつて使っていたパーカーやウォーターマンなどのブランドボールペンは、ひたすらメモを取り続ける今の仕事においては、手が疲れ、指の痛みが出るものもあったので、ちょっと感動してしまった。細字タイプではないので小さな文字は少々書きにくく、筆者のように雑な字を書く人が手帳用にするには適していない気はするが、サインから長時間に渡る会議の議事録まで、ビジネスの場での用途は広いのではないだろうか。

大正時代のロメオ万年筆。写真は当時の商品カタログ「伊東屋営業品目録」より

ブランド背景や高級感のあるデザインも多くの人を惹きつける。実はロメオは歴史が古く、元々は大正3年(1914年)に大人の男性向けに発売されたオリジナル万年筆のブランドなのである。この万年筆は、出版関係者を始め舶来モノの愛好家などにも買われていたようだが、震災や戦災を経る中でいつの間にか消え、幻の筆記具と化していた。

時が流れ蘇ったのは、2004年だ。大正時代の意匠イメージを踏襲し、伊東屋100周年の記念万年筆「ロメオNO.2」として復刻したのである。これを機に、ロメオは改めて働く男性向けのオリジナルブランドとして開発が進み、2009年にNO.3が誕生した。おそらく男性は、こうした歴史にちょっとしたロマンを感じ、購買意欲が高まってしまうところもあるのではないだろうか。

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