「毎日少しの飲酒で長生き」説、信じていい? 休肝日は、大酒を飲む「免罪符」にはならない
私の研究グループが行った研究では、ほどほどのお酒を飲んでいる人は糖尿病やメタボリック症候群になりにくいことが証明できました。
前述のとおり、アルコールは人体にとっての毒物ですから、お酒が直接的に好ましい効果をもたらしているとは考えにくく、むしろ夕食どきにほどほどのお酒を飲みながらゆっくり過ごせるような「心身のゆとりを持っている人」が長生きをしているのかもしれない、と、私は考えています。
さて、ここで肝心なのは「ほどほど」がどれくらいの量かということ。多くの調査でわかってきたのは、お酒の種類によらず、それぞれの標準グラス、たとえばワインならワイングラス、ビールならタンブラー、ウイスキーならショットグラスで1杯ぐらいが適量だということです。アルコール量にして、約12グラムと覚えておきましょう。
飲むタイミングに関して言えば、食前に少量のお酒を飲むのは理にかなっていると言えます。少量のアルコールには、消化液の分泌を促進したり、胃や腸の運動を活発にしたりする作用があるためです。その昔、病院では食欲がない患者さんに「赤酒リモナーデ」という液体を処方することがありましたが、これも中身のベースは、実はワインです。
「休肝日」を設けることには意味がない?
飲みすぎが体に悪いことは誰でも理解できると思いますが、それを防ぐために「休肝日」を設けているという人もいるでしょう。血液検査の結果を受けて、医者からそのように指導を受けた人も多いのではないでしょうか。
しかし、たとえば週に1日だけお酒を飲まなかったとしても、普段からお酒を飲んでいる人の肝臓がきちんと休まるわけではありません。肝臓は日々、アルコール以外にもさまざまな悪玉物質の解毒を行っていますから、そもそも「休む」ということはない臓器なのです。
厚生労働省研究班が行った調査(JPHC研究)によれば、アルコールを週に合計600グラム以上飲んでいる人に限り、「週に1~4日飲む人」よりも「週に5~7日飲む人」のほうが、その後の死亡率が高くなっていたそうです。
これは一見「休肝日」を設ける意義を証明するデータのように思われますが、「アルコール600グラム」は、ビールに換算すれば大瓶26本、清酒で26合にもなり、かなり度を超えた水準です。
1週間当たりこれ以上の大酒を飲んでいる人なら、さすがに飲まない日を設けたほうがいいでしょうし、飲酒以外の生活習慣にも何らかの問題があり、それらも含め死亡率を左右していると推測することもできます。
いずれにしろ、休肝日は大酒を飲むことの免罪符にはなりません。健康の秘訣は、やはり「ほどほどのお酒を楽しむ」ということですね。
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