双葉町長が年度内に役場機能の福島県内移転を表明、ただ、「住民の安全確保が前提」との信念は曲げず
福島県双葉町の井戸川克隆町長は6月20日の町議会で、今年度内に町役場の機能を福島県内へ移転する考えを明らかにした。
昨年3月11日の福島第一原発事故をきっかけに約7000人の全町民が避難を強いられた双葉町は、放射線被曝から住民を守るために町役場ごと埼玉県内に移転。加須市内の旧県立高校を仮庁舎兼避難所として、町の業務を運営してきた。
だが、原発事故から1年3カ月が経過する中で、仕事の必要性などから福島県内に戻る町民が増加。6月18日現在、県内に避難している人の数が県外避難者を上回っている。
6月20日の町議会では、そうした人口動態の変化や町民へのアンケート調査結果(回答率50.7%)を踏まえて、県内への役場機能移転を求める声が続出(タイトル横写真は20日の町議会)。「町長が否定的な姿勢を示した場合、町長の不信任動議が提出されるのではないか」とのウワサも議会直前に飛び交っていた(※)。
そして外堀を埋められつつある中で、放射線被曝の懸念から慎重な姿勢を示してきた井戸川町長も、年度内の移転を約束せざるをえなくなった。
ただ、その一方で井戸川町長は、住民や役場職員の安全確保の必要性にも言及。議会の答弁では、「年間の追加被曝線量が1ミリシーベルト以内に収まるのでなければ町民を戻すことは考えたくない」とも発言した。
議会終了後の記者団の質問でも、井戸川町長は「1ミリシーベルト基準や(1ミリシーベルトを基準に住民に安全な場所に避難する権利を保障した旧ソ連の)『チェルノブイリ法』(の趣旨を尊重する私の信念)は譲れない」と断言。
「役場機能の移転に際しても(1ミリシーベルトを)条件としたい。町役場職員の雇用責任者として職場を提供するうえでは、(安全な場所で就労させるという)環境基準をクリアしなければならない。県内に移転する場合も、もちろんその点について考慮する」と明言した。