中国の長期没落によって日本経済は浮揚する 2016年春までには2万2000円台超の水準も

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――2016年春頃まで、とはどういう意味でしょうか。その後は下がるということでしょうか。

正確な時期はわかりません。調整はもっと後になるかもしれません。現在のマーケットの特徴は、「米国の強さと中国の弱さが混在している」ということです。

武者陵司(むしゃ りょうじ)/1973年大和証券入社。大和総研アメリカのチーフアナリスト、ドイツ証券の副会長などを歴任し、2009年に武者リサーチを設立(撮影:梅谷秀司)

米国では、アップル、グーグル、アマゾンの成長に見られるようにリーディングIT企業が牽引する形で劇的に生産性が向上し、景気もおおむね順調です。一方の中国は、過剰な設備や住宅を抱えて、景気が減速。今年8月11日から13日にかけ、対ドルで人民元の基準値を3日連続で切り下げる「人民元ショック」が起き、日本株も急落しました。

9月以降、中国は資本規制を強化して、投機的な人民元売りを抑制。こうした弥縫策により人民元不安は沈静化しています。そのため、短期的には中国発の危機が起こる可能性は低く、その間、株価は上昇するでしょう。しかし、弥縫策を取るということは、問題の根本的な解決には繋がらず、墓穴を掘り続けていることを意味します。問題はますます深刻化し、来年春以降、何かのきっかけで株式市場が動揺することはありえます。

外国資本が中国から逃避

――中国の最大の問題は何ですか。

中国のアキレス腱は「対外資本収支」です。安い人件費などを背景とした競争力に基づく貿易黒字・経常黒字が中国経済を牽引したのは2009年まで。それ以降は海外からの資本流入を頼りにした投資で経済成長をしてきました。

しかし、この資本流入に大きな変調が起きており、それが外貨準備高の減少に現れています。一貫して増加してきた中国の外貨準備高は、2014年6月の3.99兆ドルをピークに2015年7月末では3.65兆ドルにまで減少しました。足元ではさらに3.5兆ドル程度まで減少しています。

「それでも中国の外貨準備高はまだ日本の約3倍ある」という見方をされる方がいるかもしれません。しかし、日本の外貨準備高はフルに自国資本によって裏付けられているのに対し、中国の外貨準備高の63%は外国資本によって支えられています(2014年末時点)。中国の金融力は著しく過大評価されており、人民元が上昇し続けるという神話が崩壊した今、中国の国際資金調達は困難となり、中国からの資本逃避にも弾みがつくことになるでしょう。

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