「実は、シズル感はかなり意識しています」
シズル感――。299円の惣菜を作る現場から、この言葉が出てくるとは思わなかった。
さらに驚いたのは、このトロトロ卵を安定して再現するために、専用の機械を開発したというのだ。その専用機械を各地の調理拠点に導入することで、どの店舗で買っても、同じトロトロ卵が味わえるようにしている。「299円でおいしい」を実現するために、専用機械を開発する。いや、専用機械を開発することで、「299円でおいしい」を実現できているのかもしれない。「安くておいしい」の実現にトライアルは本気だ。
おいしさへのこだわりと、299円という価格。この両立は、どのように実現されているのか。その答えをさらに掘っていく。
「安モノ売り」から「食が武器の店」へ
今では、このロースかつ重を目当てに来店する顧客も多いという。
スーパーの惣菜といえば、買い物の「ついで」に手に取るものというイメージがあった。しかし、筆者自身もそうであるように、トライアルでは惣菜が来店の目的になっている。
「惣菜を目的としてお客様がトライアルを選び、来店されるようになってきている」と北川社長も手応えを感じている。
その背景には、大きな転換点があった。
「昔のトライアルは、いわゆる『安モノ』『ディスカウントストア』というイメージを持たれている方が多いと思います。食品という部分に対して、お客様に訴求していなかった時代がありました」
北川社長は振り返る。
ところが2016年頃、社会環境の変化やビジネスの持続可能性を考えたトライアルは、「食が大きな武器になる」という考えのもと、“生鮮繁盛店”を目指すことにした。
その取り組みのひとつが、「商品力の向上」だ。
惣菜の企画から製造までを総括するプロ集団と組んで、ロースかつ重や卵サンドといった人気商品が生まれていった。「来店のスイッチ」となる惣菜は、この転換から生まれた。
変化は、売り場にも表れている。


















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