戦後秩序終焉に見るカナダの適応とロシアの苦境/カナダ首相が歴史的なトランプ批判演説、米中のはざまで苦しむロシア
ロシアによる国際法違反のウクライナ侵攻。そして、トランプ米大統領がデンマーク自治領であるグリーンランドをめぐって違法な武力行使も辞さない姿勢を一時示すなど、「法の支配」に基づく戦後の国際秩序が大きく揺らいでいる。
そんな中、毎年冬の一大外交・経済イベントである世界経済フォーラム年次総会(通称:ダボス会議)で、カナダのマーク・カーニー首相がトランプ政権の名指しは避けながらも、「世界秩序は破壊された。大国間の地政学は何の制約も受けなくなった」と、強烈なアメリカ批判演説を行った。
歴史にも刻まれそうな、この演説でカーニー氏は今後の国際秩序がどうあるべきかについて持論を展開した。極めて示唆に富むもので、その主張を紹介しつつ、今後の国際情勢を展望してみたい。
カナダが示すミドルパワーが生き残る道
もともとトランプ氏はカナダに対し、「アメリカの51番目の州になれ」と隣国の国民感情を逆なでする発言を繰り返していた。
そんな経緯を背景に、カーニー氏はトランプ氏のグリーンランド領有発言を受けて、国際秩序がますます大国主導でやりたい放題になっていると指摘した。曰く「私たちは、大国の競争が激化する時代に生きていることを日々思い知らされている。ルールに基づく秩序は衰えつつある。」と。
そのうえで、古代ギリシャの軍人・歴史家トゥキディデスの故事を引用して、こう嘆いた。「強い者はしたいことをし、弱者はそれを耐え忍ぶ」。
しかし、カーニー氏は世界の現状を嘆くだけではなかった。こうした時代を生きるうえで、国家としての進むべき道も世界各国に示したのだ。
カナダだけでなく、日英仏なども念頭にあるのだろうが、「ミドルパワー(中堅国)は無力ではない」と強調し、ミドルパワーが連携して主権尊重、領土一体性といった従来の西側の価値観を体現する新たな秩序を構築すべきと、提唱したのだ。
その新秩序構築に向けた柱の1つとしてカーニー氏が示したのが、自国防衛力の強化である。2030年までに防衛費を倍増すると宣言した。


















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