戦後秩序終焉に見るカナダの適応とロシアの苦境/カナダ首相が歴史的なトランプ批判演説、米中のはざまで苦しむロシア

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ただ、グリーンランドをめぐる米欧の対立では、表向きは冷静に対応しているプーチン政権だが、内心では穏やかではない。

ロシア北極圏最大の都市であるムルマンスク近くのセベロモルスクには、北方艦隊の司令部があるからだ。北方艦隊は、原子力潜水艦などロシアにおける最大の核戦力の集積場だ。

グリーンランドには現在アメリカ軍の施設があるが、仮に同じ北極圏にあるグリーンランドの領土をトランプ政権が保有することにでもなれば、ロシア軍は核戦力の聖域を守るため、非常に神経を使うことを余儀なくされるだろう。

米ロ間では、まだほかにも潜在的に懸案がある。

1つは、キューバの一党独裁政権に対するトランプ政権の動きだ。最近、アメリカ政府がキューバに対し、石油の輸入を阻止するため、海上封鎖を検討しているとの報道が出た。まだ最終決定は出ていないようだが、キューバ難民家庭の出身であるルビオ米国務長官はキューバの政権打倒に積極的といわれる。

核戦争寸前まで事態が進んだ1962年10月のキューバ危機に象徴されるように、ロシアにとって、キューバは西半球における最大の友好国だ。26年1月初め、アメリカ軍の急襲で起きたベネズエラのマドゥロ政権の崩壊では表向きは型通りの批判はしたものの、実質的には何の行動も取らなかった。

プーチン政権がキューバの現政権を守れなければ、ロシア国内で批判が高まろう。

「キューバ防衛」でも中国の後手に回る

しかしロシアにとって、今最大の懸案は実は、中国とトランプ政権、双方との間での間合いの取り方だ。ロシアにとって、中国は最大の原油購入国。侵攻開始から丸4年を迎えようとするウクライナ戦争を続けられるのも中国のおかげだ。今やロシアは中国の「手下」と陰口をたたかれている。

一方で現在、ウクライナをめぐる和平仲介を行っているトランプ政権との関係も極めて大事だ。仲介役とはいえ、明らかにロシア寄りの姿勢を見せるトランプ氏を敵に回すわけにはいかない。

こうした中、中国は食料支援や艦艇寄港を通じて中南米進出を着々と進めている。貿易や医療、科学技術といった分野でも協力を進めてアメリカに対抗し、ベネズエラに続いてキューバに圧力を加えるアメリカに「脅迫」をやめるよう求めた。プーチン大統領は、西半球情勢をめぐり極めて難しいハンドリングが求められている。

吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長

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よしだ しげゆき / Shigeyuki Yoshida

1953年、東京生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒。1986年から1年間、サンクトペテルブルク大学に留学。1988~92年まで共同通信モスクワ支局。その後ワシントン支局を経て、1998年から2002年までモスクワ支局長。外信部長、共同通信常務理事などを経て現職。最初のモスクワ勤務でソ連崩壊に立ち会う。ワシントンでは米朝の核交渉を取材。2回目のモスクワではプーチン大統領誕生を取材。この間、「ソ連が計画経済制度を停止」「戦略核削減交渉(START)で米ソが基本合意」「ソ連が大統領制導入へ」「米が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの脱退方針をロシアに表明」などの国際的スクープを書いた。また、2024年7月9日付の東洋経済オンライン「金正恩がロシアに工兵部隊の派遣を約束した!」で、北朝鮮がウクライナ侵攻への派兵を約束したことを世界で最初に報じた。

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