工場を「働き方改革」の最前線に──イトーキが滋賀で実証した人材不足時代の競争力、エンゲージメント30ポイント向上が示す意味

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2階のエルゴノミクスラボにはモーションキャプチャーとシートトレーサーを導入した。天井のカメラで人の動きや姿勢を測定し、帯状のセンサーで着座面の形状をトレースする。ここまで計測システムを揃えたオフィス家具メーカーは日本でイトーキだけだという。隣接する開発室と行き来しながら、試作と検証をシームレスに繰り返せる環境を整えた。

12年ぶりの新メカ、工場名を冠したチェア「SHIGA」

工場を共創拠点に変えた成果は、製品開発にも表れている。リニューアルと同時に発表された新チェア「SHIGA」は、2019年発売の「vertebra03(バーテブラ03)」の上位モデルだ。価格は10万〜30万円で、仕様により異なる。デザインはいずれもプロダクトデザイナーの柴田文江氏が手がけた。

vertebra03はコロナ禍で在宅ワーク向けチェアとして人気を集め、自宅用として愛用者を増やした。一方、オフィスで40台、50台と並ぶ環境では、より長時間のデスクワークに耐える座り心地と、空間に馴染むデザインが求められる。SHIGAはその要求に応えるために企画された。

イトーキ
背もたれを分割したデザインを採用し、空間に並べた際の圧迫感を抑えている。オフィスの働き方に合わせ、3つのバリエーションを用意した(筆者撮影)

開発の核は、Fチェア(2012年発売)以来12年ぶりとなる新規メカの開発だ。メカとは上下昇降や背もたれの傾き、座面との連動といった機能を実現する機構部品で、チェアの心臓部にあたる。背もたれと座面が連動する「アンクルムーブ・シンクロロッキング」を採用しつつ、座面下のメカボックスを従来比40%小型化した。ロッキング角度は従来の20度から15度に抑えた。オフィスでの使用状況を観察したところ、最大角度まで使う人はほとんどいなかったためだ。

イトーキ
新たに開発したロッキング機構を搭載している。座面下のメカボックスを従来比で40%小型化し、スリムなフォルムと座り心地を両立した(筆者撮影)

背もたれは2段(ダブル)と3段(トリプル)に分割した。横のラインを強調して圧迫感を軽減する狙いがあるが、分割した背もたれで直線を出すのは技術的に困難だった。設計チームは何度も試作を重ね、専用ゲージを作って縫製ラインのエッジを出す工夫をした。製造現場では上段・中段・下段が揃うようにガイドを当てて補正し、コーナー部分は土手を作ってタッカーで止める。「3連に並んだ時に綺麗なラインが出るように」という基準で、1脚ずつ仕上げている。柴田氏は「ハーマンミラーでもできていない」と挑戦の意義を語った。

イトーキ
分割された背もたれのラインを合わせるため、1脚ずつ専用のガイドを使って仕上げる。滋賀工場の職人による手作業が品質を支えている(筆者撮影)
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