工場を「働き方改革」の最前線に──イトーキが滋賀で実証した人材不足時代の競争力、エンゲージメント30ポイント向上が示す意味

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同社がオフィス投資の現場で見てきた需要の変化も、この決断を後押しした。コロナ禍以降、顧客企業のオフィス投資には3つの波があった。第1の波は「行きたくなるオフィス」への投資で、在宅勤務が広がる中、出社の動機づけが求められた。第2の波は人的資本経営の文脈で、エンゲージメント向上や採用力強化を目的としたオフィス改革だ。そして今、第3の波が工場に到達しつつある。イトーキはその波を顧客に提案する前に、自社で実証した形だ。

3年で30ポイント上昇、数字が証明した投資効果

滋賀工場では今回の大規模リニューアルに先立ち、4年前から段階的に職場環境の改善を進めてきた。その成果は数字に明確に表れている。

生産本部のエンゲージメントスコアは2022年の50.8%から2025年には81.6%へと約30ポイント上昇した。このスコアは「イトーキを誇りに思いますか」という質問への肯定回答率だ。一般的に営業部門が高く生産部門が低くなる傾向があるが、イトーキでは生産本部のスコアが全社平均の82%とほぼ同水準に達している。

イトーキ
生産本部のエンゲージメントスコアは81.6%に達した。工場の働き方改革を進めた結果、2022年の50.8%から3年間で約30ポイント上昇している(筆者撮影)

採用面の変化も顕著だ。技能職の求人応募数は2023年から2025年にかけて約4倍に拡大し、離職率は半減した。工場見学の受け入れ数も増加を続け、年間1200名を超える。2024年からは専任部隊を設置したが、それでも予約は2カ月待ちの状態だ。

具体的な施策には遊び心がある。従業員の家族を招く「ファミリーデイ」は2025年11月に611名が参加した。工場で働く女性従業員がダンスを披露し、近隣大学とコラボしてチェアの余り布でおもちゃを作るワークショップも開いた。

休憩室には仮眠ブースを導入した。製造現場では2時間以上集中して作業を続けるため、休憩時間に1人になりたいというニーズがある。窓際にはカフェのようなカウンター席を設け、本物の植物は従業員自らが水やりをして管理している。工場内の移動には近隣ゴルフ場から譲り受けたゴルフカートをラッピングして使う。

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