人手不足の深刻化でインフレが止まらない…建設業は日本独特の商慣習を見直しできるか

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中野サンプラザ(写真:Gengorou/PIXTA)

資材価格の高騰や人手不足の深刻化で、建設費の上昇に歯止めがかからない。国は建設技能者の処遇を改善するため、今年末に標準労務費を作成・勧告することにしており、さらなる建設費の上昇は避けられない見通しだ。こうした状況に対応するため、インフレリスクに適応した建設工事の発注方法を模索する動きが出てきている。

日本では、建設工事の発注方法はゼネコン(ゼネラル・コントラクター=一般請負業者)や工務店に建設費の総額で発注する「総価一括請負方式」が一般的だ。しかし、インフレ経済が続いてきたアメリカや欧州などでは工種ごとにコスト情報を開示して発注する「オープンブック・コスト+フィー方式」が標準的な発注方法として普及している。

日本では1990年代半ばからデフレが続いてきたため、超高層オフィスビルやタワーマンション、市街地再開発事業など、請負金額が大きく工期が長い大型工事でも「総価一括請負方式」で発注されてきたが、インフレリスクが顕在化したことで公共工事では入札不調が相次ぎ、複合施設「中野サンプラザ」(東京・中野)など大規模再開発や三菱商事グループの洋上風力発電の大型プロジェクトが頓挫するなどの問題が表面化している。

果たして建設費の上昇によって、建設業は日本独特の商慣習を見直し、インフレ対応型のビジネスモデルへと変革していくのか。2回に分けてレポートする。

修繕工事でも高まる透明性要求

今年3月に公正取引委員会がマンションの大規模修繕工事で談合の疑いがあるとして、長谷工リフォームなど約20社に調査に入った。6月には管理組合の修繕会合に施工業者が住民になりすまして入り込んでいたという事件も報じられた。建設費の上昇がマンションの修繕積立金不足が懸念されるなか、日本リノベーション・マネジメント協会(RM協会、会長・小田和幸氏)への問い合わせが増えている。

RM協会は大規模修繕工事のコスト透明性と公正性を確保しようと2012年に設立された団体で、「オープンブック方式」の普及に取り組んできた。国交省の報告書にも取り上げられ、建設業界ではよく知られているが、日本ではオープンブック方式そのものに馴染みがないだけに、いまだに認知度向上が課題となっている。

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