人手不足の深刻化でインフレが止まらない…建設業は日本独特の商慣習を見直しできるか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しかし、マンションの大規模修繕工事で公取委が調査に入るなど、談合疑惑は後を絶たない。発注者が入札や見積もり合わせで価格競争を促そうとしても、建設業者が談合して価格を釣り上げていることを見抜けなければ、結局、高値で契約することになる。設計監理方式も、設計コンサルタント会社と施工会社が結託して工事費の水増しを行っていると、2017年1月に国交省が注意喚起を行うといった問題も明らかになっている。

さらに一括請負方式は下請け業者が重層化しやすく、元請け業者でも施工体制や支払い状況を十分に把握できていないケースが生じる。今年4月に開幕した大阪・関西万博で発生した工事代金未払い問題も、施工体制の重層構造に起因していると考えられる。

オープンブック方式導入が進まなかった原因は「デフレ」

日本では1991年にバブル経済が崩壊し、93年にゼネコン各社が政治家や地方自治体首長に賄賂を贈っていたゼネコン汚職事件が発覚した頃から、建設業界でオープンブック方式の研究が本格化した。不良債権処理が始まった96年頃から外資系金融機関や投資家が日本の不動産投資市場に参入。日本のゼネコンのコスト管理が不透明であるとしてオープンブック方式によるCMを要求し、外資系建設コンサルタント会社のボヴィス・レンドリース・ジャパン(現・レンドリース・ジャパン)や竹中工務店などが実施したのが最初の事例となった。

その後、様々な企業が普及に取り組んだが、日本ではオープンブック方式の導入は進まなかった。最大の原因は「デフレ」と証言するのは、2023年3月に竹中工務店の常務執行役員を退任し、現在は公益財団法人ギャラリーエークワッド理事長を務める関谷哲也氏である。同氏は1991年から2年間、アメリカのCM会社に社命留学し、2004年から8年間、ドイツの竹中ヨーロッパに赴任し、欧米での建設プロジェクトに精通している。現在は国交省が今年5月に立ち上げた「建築分野の中長期的なあり方に関する懇談会」の委員を務める。

関谷氏は、アメリカ留学後に社内でPM(プロジェクト管理)/CMの専門組織を立ち上げて事業化に取り組んだが、「当初は現業部門からの理解が得られなかった」と振り返る。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事