人手不足の深刻化でインフレが止まらない…建設業は日本独特の商慣習を見直しできるか
すでに建設技能者をデータベース化し、就労履歴や技能資格などを登録する「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の運用が2019年から始まっており、これまでに技能者の56%に当たる168万人が登録している。
CCUSでは、能力評価に応じたレベル別年収を試算して公表しており、実際に支払われた賃金データをCCUSに登録して比較できるようになれば、実効性が確保できるようになる。
日本独特の商習慣は変わるのか
さらに2026年4月から建築確認申請でのBIM審査がスタートする。BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)とは、建築物を3次元モデルで設計する手法。日本は欧米に比べて導入が遅れていたが、2029年までにはBIM審査を義務化する方向だ。従来の2次元図面から材料の数量を拾い出す作業は手間がかかっていたが、BIMシステムを使えば材料の数量を効率的に算定でき、材料費を正確に計算できるようになる。
建設費の労務費、材料費、経費などが透明化されれば、「オープンブック・コスト+フィー方式」を導入する環境が整うことになる。すでに中建審では2023年9月にまとめた「請負契約の透明化による適切なリスク分担」と題した報告書で、「オープンブック・コスト+フィー方式」の制度を検討すべきと提言している。
日本の建設工事の発注方法は、ゼネコンや住宅メーカー・工務店など元請業者との「総価一括請負方式」しか選択肢がなかった。人手不足の深刻化で建設業者の倒産が増え、建設費のインフレがますます進むなかで、日本独特の商習慣を変えないまま、建設業は持続的な産業として生き残ることができるのか。発注者と受注者の間で、インフレのリスク分担のあり方を見直すことが喫緊の課題である。
後編記事「もはや「富裕層しか建てられない」日本の住宅…欧米で普及する方式導入で価格は下がるのか」に続く
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら