人手不足の深刻化でインフレが止まらない…建設業は日本独特の商慣習を見直しできるか

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結果的に、建設業の就業者数は1997年の685万人から2010年には498万人へ、うち建設技能者は464万人から341万人へ減少した。その影響が顕在化したのは、2011年に発生した東日本大震災の復旧・復興工事だった。国交省でも人手不足対策に乗り出し、処遇改善を図るため、2012年度から公共工事設計労務単価の引き上げを開始。建設業界に蔓延していた建設技能者の社会保険料未払い問題に対応するため見積書に法定福利費を別枠で明示することを義務づけるなど対策を講じた。

しかし、建設業の賃金は、その後も他産業との格差が縮まらず、就業者数も減少の一途を辿っている。国交省では建設業の担い手の中長期的な育成・確保を図るため「担い手3法」※を2014年、2019年に続き、2024年9月に3回目の改正を実施。その中で「標準的な労務費」を勧告することが盛り込まれ、中央建設業審議会(中建審)で「労務費の基準」を策定する作業が進んでいる。

※担い手3法とは、公共工事の品質確保の促進に関する法律、建設業法、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律

いかに制度の実効性を確保するか

国交省では、労務費に加えて法定福利費や安全衛生経費など「雇用に必要な経費」も別枠で明示できる標準見積書を作成して普及していく方針だ。材料費と労務費が分離され、経費の内訳も明示されるようになれば、建設費のコスト構造が透明化され、発注者も理解しやすくなる。

問題は、標準的な労務費や経費が標準見積書に反映されるように、いかに制度の実効性を確保するか――。

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